ワイン服毒事件を立証せよ!

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ワイン服毒事件を立証せよ!

雑務に追われる日々に立証班らしい仕事という終止符が打たれた。 資料の表紙にはデカデカとワイン服毒事件の文字。 レストランで赤ワインを飲んだ女性が重体となった事件だ。 だが彼女が飲んでいたのは確かに赤ワインなのだが毒が検出されたのは白ワインだった。 前回と似たようなケースで犯人はわかるがトリックがわからないとのことだった。 ボーっとした目で深西も資料を読んでいる。 「とりあえず被害者の女性に話を聞きにいけばいいんだろ?」 裏路地を抜けた大通りに面している病院に女性は入院していた。 「こんにちは」 にっこりと女性は微笑んだ。 穏やかそうな人でよかった。たまに逆上して刑事に殴りかかる人もいるくらいだ。 「あなたが飲んでいたのは本当に赤ワインですか?」 一瞬キョトンとして答えだした。 「赤色だったですし、赤ワイン独特の風味もありましたよ。こう見えても職業はソムリエなので」 一課が投げ出した理由がわかった。 だって被害者はワインのソムリエで赤ワインか白ワインはくらいはわかるはずだし、一緒に食事していた男性も彼女が飲んでいたのは赤ワインだと明確に証言している。 このままでは証拠不十分だとして犯人が無罪になってしまう。 それだけは・・・それだけは・・・嫌だ! もがき続けても収穫のない毎日。 カレンダーに裁判の日程までのバツを何回書き込んだだろう。 被害者の人に私と同じ思いはさせたくないんだ。 私みたいな人間を増やしたくないんだ。 頬に冷たい感触がする。 振り返ると深西だった。 「あんま根を詰めすぎるなよ。お前に何があったか知らねえがぶっ倒れない程度に頑張れよ」 にかっと笑った。 「あんたさ、冬なのにアイスコーヒー渡す?普通ホットコーヒーでしょ」 自然と頬が緩む。 いきなりプツンと音をたてて電球がおとなしく消えた。 寒空の下、電気屋へと足を運ぶ。 「VR無料体験実施中!」ののぼりが目に入る。 気分転換という大義名分の下体験することにした。 「はい、体験者の皆様にはVRを装着してジュースを飲んでいただきます。何味か当てられるか挑戦してみてください」 配られたVRをつけると驚いた。 こんなにリアルだったとは・・・ ジュースが配られる。 画面に紫色のジュースが映る。 手元のジュースは葡萄の味がする。 「これはブドウジュースですか?」 「残念、不正解です。VRを外してみてください」 言われるがままVRを外してジュースを飲んでみる。 「レモン味?」 「そうです。人間は視覚的に色で何味かを判断してしまうことがあるので視覚的な判断に引っ張られて感じる味も変わってしまうことがあるんです」 ん?もし思いこみだとしたら・・・ 寒さが一段と身に染みる朝に私と深西、堀川課長が女性がいる病院に集まった。 「刑事さん達、いつもありがとうございます。今日は何の御用で?」 「他でもありません。毒が入っていない赤ワインを飲んで中毒症状かでた理由がわかりました」 「え!?」 「まず、あなたが飲んだのは赤ワインではなく、白ワインに赤い着色料を入れた見た目はそっくりの偽赤ワインです」 「でも、赤ワイン特有の味がして・・・」 「ある国でソムリエ達に白ワインと白ワインに赤い着色料を入れた偽赤ワインを飲んでもらいレポートを書かせました。着色料に味はついていませんから、全く同じ白ワインです。結果は偽赤ワインのレポートに赤ワインに使われる表現を使ったソムリエが多数おり、ほぼほぼの人が偽赤ワインを赤ワインだと答えたんです。あなたのようなプロでも見分けられないんです」 「そんな・・・」 これにてワイン服毒事件は幕を閉じた。 『この犯罪、立証しました』
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