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 手裏剣は概して、忍群ごとに特有の種類が用いられる。 ここ甲賀では高い飛行安定度を誇る八方手裏剣が主流であったが、 伊賀では重く殺傷能力の高い十字手裏剣が浸透していた。 「あぁ、思い出した。  数年前の話だが、どこの馬の骨とも知れない異国の男と駆け落ちした、  淫らな抜け忍が別部隊にいた、と。  お前がその噂の張本人”野薔薇(のばら)”だな」 わざとらしく目尻に皺を寄せる仙桜寺。 彼の手元が断続的に痙攣する様子が、炎天には見て取れた。 「裏切りの罪は重いぞ。少々痺れが回ってきたが関係ねぇ。決着を急ぐまでだ」 鈍った体に鞭を打ち、憎悪を以て野薔薇に食って掛かる。 片膝をつく炎天は事の成り行きを追う最中、 野薔薇の目元を一瞥し、その素顔を確信した。 そして、彼女が同じ忍者で、しかも元は敵であった驚き、 押し隠すべき生業が恐らく明るみに出てしまった焦り、 自分が守らなければならないはずの家族に助けられてしまった情けなさなど、 複雑な心緒が頻りに交錯するのだった。
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