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野薔薇は伊賀きっての鎖鎌使いでもあった。
鎌の頭頂部に繋がった、握り拳大の鎖分銅を回転させ、
仙桜寺をまっすぐ打撃する。
一方で、彼は直線的に伸びる鎖を故意に忍刀へ巻き付かせ、
仇討ちを冷静にいなした。
続けて、柄に突き刺さっていた十字手裏剣を野薔薇に投げ返す。
翻って身動きを制限された彼女はそれを避け切れず、
手首を犠牲にする他なかった。
「お前の動きはかなりの年月を空けて衰えているな。
そんな腕で俺を倒そうなんて百年早い」
宙を泳ぐ血飛沫を眼前にし、炎天の目の色ががらりと変わる。
妻が表立って痛め付けられる拷問に、彼はどうしても耐えられなかった。
傷痍を理由にのんきに倒れている場合ではない。
決死の覚悟で投げた、残り最後の八方手裏剣が、
荒波を押し退け大航海に繰り出す。
目標地点は仙桜寺。航路はか細い一本道に限られていた。
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