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いじめられっ子と友達になってた話
「おはよう……」
そう、小さく聞こえた声に、俺は「あぁ」と顔を上げた。
「おはよ、吉川」
始業のチャイムが鳴り、みんながバタバタと席へついていく。
「なぁ、今日の宿題さぁ……」
そうこっそり吉川に話しかけると、吉川はすかさず「ダメだよ」と首を振った。
「写しちゃダメ。宿題は、自分でやらないと……分からないところは、教えるから」
「ちぇー、吉川は真面目だなぁ」
ガラガラと音がして、先生が教室に入ってくる。出席を取る声にあくびをしながら、俺は窓の外を眺めた。
今日もクラスは平和で、何事もない。何かが足りない気がするのは――そんな毎日が退屈だからなんだろうか。先生の間延びした呼名とそれへの返事だけが、教室の中に響き渡る。
「村上ぃ、森田ぁ、盛や――盛山? 誰だそりゃ。なんで知らない名前が出席簿にあるんだ? 全く……次、吉川ぁ」
吉川が小さな声で「はい」と返事をする。
――真っ青な空の奥で、なにかがちかりと、光った気がした。
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