いじめられっ子が変わった話

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いじめられっ子が変わった話

「おい、吉川。てめぇなに学校来てんだよ」  教室に、乱暴で陰湿な声が響く。  声の主は、校内でも問題児として恐れられる盛山だ。中学二年なのに、すでに先生より身体が大きくて、おまけに昔ボクシングをやってたらしく、やたらと喧嘩も強い。  そんな盛山が憂さ晴らしのターゲットにしてるのは、同じクラスの吉川だった。こっちは、いわゆる典型的な「陰キャ」で、正直俺も、ほとんど話したことがない。クラスのみんなそういう感じなのか、盛山から吉川をかばおうとするヤツはいなかった。 「てめぇはクセぇし汚ねぇから、学校来んなって昨日言っただろ。そんなことも覚えてらんない頭なんかよ」  盛山が吉川の机をガタガタ蹴りながら笑う。取り巻きも、必要以上に大声で笑った。 (昨日は、盛山が吉川にゴミ箱の中身をぶちまけたんじゃないか……)  そう思うけれど、口には出せない。出したら終わりだ。俺まで巻き込まれることになる。こんなやり取りだって聞いていたくないけれど、吉川と席が近いせいで嫌でも耳に入ってくる。 (知らんぷり、知らんぷり……)  そう、自分に言い聞かせてた時だった。 「僕の頭は、すこぶる優秀だよ。少なくとも、牛のようにモーモー鳴くことしか取り柄のないキミよりね」  一瞬、誰の言葉だか分からなかった。思わず振り向くと、ぽかんとした表情だった盛山の顔がみるみる真っ赤になっていき、取り巻き連中の顔が反対に青くなっていく。 「舐めてんじゃねぇぞテメェ!」  ガンッと盛山が吉川の机を蹴り上げた。吹っ飛んだ机は二メートルくらい先に転がり、女子が「キャッ!」と悲鳴を上げる。  吉川は特に表情を動かさないまま、「ふぅん」と唸った。
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