第四話:馬子にも衣装!? みんなで大変身!

3/6
前へ
/118ページ
次へ
「とっとと着替えちまおうぜ? モモちゃーん、スケさんのこと頼むぜー!」  言うなり、太鳳は着ていた制服を次から次へと脱ぎ始める。 「叫ばなくとも聞こえる。じゃあ志賀、始めるか。まず、制服を脱いでこの裾よけをTシャツを下ろした状態で腰に巻いてもらう。その後、こっちの長襦袢(ながじゅばん)を着てもらう。足元は足袋を履くから靴下から先に履き替えるように。ところで、食事はちゃんとしているのか? 痩せている奴はタオルを入れて厚みを調整しないと着物はキマらないぞ?」  すでに制服を脱ぎ終え、下着とTシャツ一枚になっている太鳳には目もくれずに、阿曇さんはオレの方に手を伸ばした。ワイシャツの上から体のラインを確かめるように掌を滑らせる。  朔はおろか、太鳳にも及ばない貧相なオレの体をひと撫でして、阿曇さんはちょっとだけ長い溜息をついた。 「……お前はもう少し食事をしっかりとって体を鍛えた方がいい。思春期の男にしては痩せ過ぎだろう」  そんなこと言われてもなぁ……食べて鍛えてこのうっすい体がどうにかなるなら、とっくにそうしてるんだけど。どうも何を食べても太りにくいみたいで、身長も相まって痩せ型の部類から抜け出せない。  四楓院先生も細いけど、あの人は身長と体のバランスが上手く取れてると思うんだよなぁ。  っていうか、女性から「もっと食べて鍛えろ」って指摘を受けるオレって……すっごく情けなくない? 「厚みがない分、タオルでかさ増しして誤魔化す。長襦袢を羽織ったら言いなさい」  それだけ言うと、阿曇さんはオレに裾よけと足袋と長襦袢を持たせて背を向けた。オレの着付けに必要な他の小物を揃えながら、 「見られながら着替える趣味なのか?」  ってボソッと呟いた。  あぁ……そういうことか。  オレに背を向けたのは、阿曇さんなりの気遣いだったってことだ。
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加