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「すぐ着ます」
受け取ったものを一旦足元に置いて、制服を順番に脱ぐ。後ろ向いてくれてるんだし、ズボンも脱いでいいよね──裾から足を抜いたところで、
「終わったか?」
そう阿曇さんが声をかけてきた。
いやいや待って、早い早い。
「だっ、まだです!! 終わったら言いますから!」
「大海原みたいに豪快に着替えてもかまわないぞ? 男の着替えなら、祖父で見慣れているから、気にしない」
「早くしろよ」──そう言って阿曇さんは太鳳の方を見た瞬間溜息をついた。普段から剣道着を着慣れているから大丈夫だと言っていたにもかかわらず、太鳳の着付けはとんでもなく適当だった。
四楓院先生に直してもらうにしろ、もう少しまともに着られたんじゃ……。
「襟の形がなってない。ここは帯をもう少しきつく引いておかないとすぐ着崩れ──あぁ、違う、そうじゃない。貸せ、私がやる」
テキパキと手を動かす阿曇さんには、本当に隙がない。機械的っていうより、そういう家系で育ったみたいな。無駄な動きなく流れるようにこなしていく、そういう風な教えを受けて育ったんだろう。
「ぉおお!! すげぇ! ピシッとしてる! スケさん、どーだよ! カッコよくね!?」
「あ、あぁ、うん……すごく決まってる」
馬子にも衣装ってこういうことか。
衣装をきっちり着こなした太鳳は、普段の彼と違って横顔すらちょっとだけ大人びて見えて。着付け一つでこんなに変わるんじゃ、オレはどうなるんだろう。
「いい加減終わったか? 向くぞ?」
阿曇さんが振り向いた瞬間、オレは薄い生地の前をかき合わせた。
Tシャツは着てるけど下は裾よけと下着だけって純粋に恥ずかしい……。
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