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「おい……お前、身長はいくつだ?」
「えっと、春の健康診断では182センチ、でしたね」
「……お前の身長じゃおはしょりを作ったら丈が短くなる。対丈で着付けるぞ」
「ついたけ?」
……ってなんだっけ?
そういえば、姉貴もよく夏祭りの時『浴衣の丈がー』とかって言ってたような。
「おはしょりを作らずに着付ける方法だ。身長が高い者に有効な着付け方だな。私も背が高いから、おはしょりを作ろうとすると上手くいかないが、この対丈という着付け方ならきちんと着付けることができる」
「あぁ、なるほど」
「まぁそれでも、お前ほどの背丈ならギリギリかもしれないがな?」
言うなり阿曇さんが一度上げた生地をストンと落として、合わせ直してからオレの腰骨辺りに生地を寄せ、腰紐をお腹側からぐるりと一周回した。
実際はお臍より上の位置に紐が合わせてあって、後ろで交差して引き締めながら前に持ってくる。ちょうちょ結びをしてからあとは下前を引っ張ったり背中側のシワを綺麗に伸ばしたり、色々と手を加えていって整え、長襦袢の時にも使った白い太めの帯びで留めてから、黒地に柄が入っている、いわゆるよく見る帯を手際よく巻き止めて、さらに上から帯留めで飾って、
「よし、いいぞ」
そう言った。
「うわぁ……!」
姿見で自分の姿を確認すると、女性用の着物を着こなしたオレがいた。あとは髪を結ってメイクをすれば完璧に町娘・お龍の出来上がりだ。
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