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「70円は安いね」
最近はなにかと値上がりが続いていて、コンビにやスーパーでも、プリンはひとつあたり100円以上の割高商品に定着しつつある。
クリームがのってたり有名ケーキ店とのコラボでチョコ味だったり、季節商品でイチゴのソースがかかってたり、味のバリエーションも増えたけど。それらと比べたら遥かに安価だ。
「今日の特売は鶏ムネ肉の唐揚げ100グラム65円! これもまたウマイんだよなぁ!」
山盛りの唐揚げが乗った皿を指差して、太鳳がノリよく勧めてくる。
一個70円の手作りプリンも100グラム65円の唐揚げも、オレが主婦なら間違いなく即決で買って帰って、夕飯のおかずやデザートにするだろう。けど、そういう話をしに来たんじゃないはずだ。
「……あのさ、太鳳。お惣菜の宣伝するためにオレを呼んだの? なんか頼みがあるって言ってなかった?」
話の腰を折るのは気が引けたけど、ここでお買い得なお惣菜の話を延々されても困る。太鳳は一瞬キョトンとした顔をして、
「あー、それな! 忘れてた!」
と、悪びれない様子で笑った。
「ンンッ! あー、えー、実はスケさんに折り入ってお願いが」
わざとらしく咳払いなんかして。折り入ってなんて言う奴が、お願いごとの時まで人をあだ名で呼ぶもんか。
「前置きはいいから、率直に」
手をつけたら残すわけにいかないから、プリンの続きをちびちび食べながら太鳳をせっつく。
オレの態度に変な小細工をしても無駄だと思ったのか、太鳳は一度は正した姿勢を崩してあぐらをかいた。
爪楊枝で唐揚げをふたつまとめて刺し、大口開けて頬張る。
むぐむぐと忙しなく口を動かして唐揚げを飲み下すと、お茶を啜りながらテーブルに頬杖をついた。
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