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「来週文化祭あるだろぉ? 剣道部は講堂のステージで演武をやんだけど、その前に寸劇をやんだよねー。でさぁ、劇に出るメンバーが決まんなくて。スケさんとやーさんにお願いできねぇかなぁと」
お茶を啜りながら途中まで「うんうん」と相槌をうっていたけど、まさかの展開にお茶を詰まらせる。
……オレと朔が劇に出るの? どうしてそうなった?
「あと一週間だよ!? なんでこの時期までメンバーが決まんないのさ?」
さすがに「はいそうですかー」とは流せなくて、湯呑を持ったまま、ずずいっと太鳳の方へ身を乗り出した。
打診をされるからには理由を聞く権利、あるよね。
オレの剣幕に太鳳は一瞬上半身を引いて視線を泳がせる。
湯呑をテーブルに置いて、両手の人差し指同士をちょんちょん突き合わせながら、
「いやぁ、なんか台本? 脚本? を手直ししたみたいでよ。そこに合わせると、うちの部員じゃどう頑張っても無理ってーか……」
なんて言ったかと思えば、
「なぁ、頼むよ~! もうスケさんとやーさんしかいないんだって!」
また姿勢を正し、テーブルの上に両手をつくと、大振りな動作で頭を下げた。勢いあまってテーブルに額をぶつけ、『ゴンッ』って鈍い音が響く。天辺のつむじがはっきり見えた。
「ちなみに聞くけど、なんでオレと朔なの? 完全に部外者じゃん、そこわかってる?」
「そりゃもちろん! だからぁー、困ってるって話しっぽ先生にしたら『条件的に志賀と秋月なら力になってくれるんちゃうか~?』って! さすがの人脈ってカンジ!?」
「あーそういう……」
オレらの知らないところでなに好き勝手言ってくれちゃってんだか。人脈どうこうより完全に思いつきじゃん。
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