悪魔のような女

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b925d1e9-80b7-430d-9763-02ca28f199c6 フリーランスのコピーライター小清水麻也子32歳は池袋のスナックゆかりのバイト帰り、池袋西口のステーキ屋ぼたんで血のしたたるレアステーキを食べていた。今日の麻也子は動物的だ。 生理二日目で肉を狂おしく欲した。 ぼたんは昭和モダンの雑居ビルの一階にある。 スナックで着ていた紫色のセクシースーツからしまむらの850円の小花柄の安っぽいワンピースを着ている。 パッチリした目と赤い口紅が印象的な正統派美人かつミステリアス。 黒いロングヘアをかきあげ、ステーキを頬張っている。 昼間はところざわ広告社の飯能ニコニコ不動産と所沢サンサンスーパーのコピーの仕事だった。 一つににつき、2000円。 巣鴨女子短大を卒業し、広告業界を目指した麻也子は三流短大卒で門前払い。 派遣社員で渋谷アドに勤務するも事務 仕事の上、派遣切りに合う。 今はフリーランスのコピーライターとして主に埼玉中心に小さな仕事を細々やっているが、フリーランスのコピーライターでは食えない。 麻也子は夜は池袋のスナックゆかりで ホステスのバイト、深夜はコンビニバ イトをしている。 椎名町にある築45年のアパートに 住んでいる。 風呂なし、共同トイレ。 シャワーは池袋の漫喫で済ます。 今日はコンビニバイトは休みだ。 生理中の麻也子は400gのステーキに食らいついてた。 寡黙で白髪細身のコック袋のマスターと中年の太った豹柄のおばさんと腹の出たメタボおじさんは角切りステーキを食べていた。 他に客はいなかった。 中年の夫婦らしき男女は芸能スキャンダルを話していた。 そこに、千鳥足で大庭つぐみ29歳がやって来た。 つぐみはモード風の高級感あるマルニのグレーのワンピースを着て、ボブヘアにゆるいパーマをかけている。 知性的なキリッとした顔立ちだ。 麻也子の向かいの席に座った。 「マスター、ドイツワインとフィレステーキ。」 呂律の回らない口調で麻也子は注文する。 マスターは97年のモーゼルを用意する。 麻也子はモーゼルをグラスについでガバガバ飲み干す。 香ばしい匂いと共にフィレステーキが つぐみのテーブルに運ばれてくる。 つぐみはオニオンソースをたっぷりかけて、フィレステーキを味わう。 麻也子はつぐみをどこかで見た顔だと思っていた。 明王堂のエリートコピーライターで平成食品のカップ麺やダニエラ化粧品全般を手がけ、更に恋愛小説家としても活躍中だ。つぐみの恋愛小説は人気俳優の平瀬圭佑27歳と人気女優浅見セリナ25歳で映画化され、大ヒットした。 金も地位も名誉も知性もあるつぐみ。 麻也子はモーゼルを一気に飲み干した。 そして、つぐみを睨みつける。 しかし、泥酔してるつぐみは気付いていなかった。 つぐみはフィレステーキを半分残した。
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