1.縁側にて。

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 ヘリコプターが横切っていく。たっ、たっ、たっ、という低音がおなかに響く。やけに低く飛んでいる。縁側に貼り付いたわたしはその白い腹を見る。屋根の陰に消えていく。  目が乾いた。まばたきが痛い。目じりから一筋涙が流れた。  上半身を起こす。働きたい、と思った。やっぱり人間働かないと。けど、おなかがすきすぎて立ち上がれない。めまい。鈍く重いこめかみをぐりぐりと揉んで、目を閉じ、ぎらついた空の光が消えるまでじっと待つ。それでも足腰には力が入らなくて、結局また縁側に倒れこんでしまった。ああ、やっぱりわたしはこのまま死ぬのかも、と倒れて後頭部を思い切り打ち付けたとき思った。思った瞬間気を失った。
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