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その夜、桐谷はおかしな夢を見た──。
衝撃すぎて夜中の3時に目が開き、飛び起きると一瞬夢か現実かわからなくて視線を部屋中に泳がせる。
そこはいつもの自室で、さっきまでのことは全て夢であることを理解した──。
「柚莉愛のやろぅ……」
上半身を起こして汗ばんだ額を拭う。
柚莉愛が意味不明な言葉を桐谷の耳にインプットしたせいで、桐谷はあろうことか峯とセックスしながらハメ撮りしているとんでもない夢を見てしまった。
お陰で今はひどく自己嫌悪している──。
夢の中の峯が見たこともないのになぜか全裸だったのを思い出して、桐谷は思わず自身に呆れながら失笑した。
「俺と柚莉愛のことを知ったら……あいつは絶望して自殺するかもな……」
口にしておいてあり得なくもないと桐谷は恐怖を覚えた。
真実を知ったらあいつは俺を憎んだり、軽蔑したりするんだろうか……柚莉愛のことも軽蔑するんだろうか──あんなにも真っ直ぐに心酔しているアイドルをバッサリと切り捨ててしまうのだろうか……。
峯は絶望するとどうなってしまうのだろうかと、黒い妄想が背後から影のように迫り寄って、桐谷をゆっくり支配してゆく──そして、その姿を見てみたいと腹の底に飼うムジナが顔を出す。
穏やかそうなあの顔をこれ以上はないほどに乱して、泣きちぎるのだろうか──それとも燃えるような憎悪の眼で俺を見るのだろうか──
「俺の外道具合も結局のところ柚莉愛と大して変わらないのか……」
大きく自嘲を含んだ息を短く吐いて桐谷は再び身体を横にして目を瞑った──。
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