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冷たい空気が、肌を刺す。 ゆまは雪うさぎをそばへ置くと雪に触れた氷のように冷たい手で、あの日と同じように私の頬に触れた。 「知っていますよ。ずっと前から」 ゆまは真っ直ぐにこちらを見つめた。 「何度も、何度も擦り切れるまで読み返しました。往来ゆづり《おうらいゆづり》。性別女性。17歳……。魂の期限は12月1日、白血病による病死。」 ……もう諳んじられるくらい。 そう言うゆまの声は消えてしまいそうなくらいか細かった。 「忘れたくても、忘れられませんでした。ゆづりは覚えていないのかもしれませんが……それも仕方のないことです」 少しだけ、昔話をしましょうか。 ゆまが言った。
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