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「私が死神学校に通い出してから少し経ったころ、実技研修で人間界に降りたことがあったんです。
とある家族の魂を定め通りに送ることが今回の研修内容だと先生は言っていました。死の気配が近いとイレギュラーなことが起こりやすいため、死期がずれないように一週間程度魂のことを見守るのだそうです。
それなら簡単じゃないかと私は思いました。人間学も死神学も成績はトップでしたし、人間を見守るなんて誰でもできる、そう思ったんです。
私が担当したのは幼い少女でした。これが何とも危なっかしくて、とてもヒヤヒヤしたのを今でも覚えています。木に登ってみたり、勇ましく川に突っ込んで行ったりとてもやんちゃな子でした。あまりにも見ていて怖いので開始二日目にして先生に相談に行きましたが、イレギュラーはそうそう起こることではないから大丈夫と宥められました。不満でしたが仕方ありません。そのままその子を見守り続けました。それから毎日、何時間もその子を眺めていて気が付いたんです。
彼女はやんちゃでしたがそれ以上に優しい子でした。自分も大好きであるはずのものを弟や妹に譲ったり、小さな子猫を助けてあげたり、困っている人がいれば声をかけて。
自身に得はないはずなのに、誰より幸せそうに彼女は笑うんです。不可解だと私は感じました。
魂に心を寄せてはいけない。死神学の基本中の基本でした。
「それでも、海に呑まれた貴女をみたら耐えられなかった。
手を差し出さずにはいられなかったんです。」
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