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それから少しずつ、死神さんとの小さな交流が始まった。 「そういえば死神なのに大きな鎌持ってないのね。死神いえば、みたいな持ち物じゃない?それとも隠してるの? 」 それは出会った時から思っていた疑問だった。 「貴女が言う死神というのは随分と物騒なのですね。私たちが死神学校で支給されるのはこれです」 そう言った彼女の手から、淡い光を帯びてふわりと浮かび上がったのはアンティーク調の洋バサミ。 「綺麗……」 「半分正解ですけど、半分不正解ですね。鎌なんて持ってたら邪魔ですし」 向こうではしまえませんからねと彼女はクスリと楽しそうに笑った。 「向こうってどんなところなの? 」 そう聞くと、彼女はどこか遠くを見つめた。 「私には死神学校から以前の記憶がないのでなんとも言えないですけど、死神学校では仲間にも恵まれて楽しいところですよ。 貴女が言う向こうというのは、多分輪廻の輪のことも含まれているんでしょう。でもあそこは私たちでも近づけないんです。呑まれてしまうから」  「りんねのわ……?」 聞き慣れない言葉だった。 「そう、輪廻の輪。死者の魂が還る場所」 私は貴女をそこへ送り届けるのが仕事です。 そう言って彼女はそっと私の頬に触れた。 氷のように冷たい、けれど確かな温もりを持ったその手を、私は知っている。 輝く二つの黒曜石は私を重ねた誰かを愛しむように見つめていた。 そっと彼女の手に触れた。 包み込むように。
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