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それから私は彼女のことを死神さんではなく、ゆまと名前で呼ぶようになった。
「ねぇ、ゆま。ここにあったノート知らない? 」
あれから彼女はずっとここにいる。
私が寝る時は備え付けに椅子に座って、ぼーっと外を眺めていた。
帰らなくていいのかとか、寝なくて大丈夫なのかと聞いたがゆまは大丈夫の一点張りでそれ以上はなにも教えてはくれなかった。
私にだって人に言いたくないことの一つや二つくらいある。
だからそれ以上は何も聞かなかった。
けれど少し、ほんの少しだけ寂しいと思ってしまった。
「ああ、これのことですか? ごめんなさい気になったので読んでしまいました」
「嘘⁉︎ 日記だってことくらい見ればわかるわよね。そういうのは普通読まないもんでしょう? 」
「無防備に机に置いておく方がいけないんですよ」
ゆまは悪戯っ子のようにクスクスと楽しそうに笑った。
本当のゆまは表情が豊かでよく笑う。それも最近知ったことだ。
ゆまは私のものを見つけては手に取って、懐かしむように、慈しむようにしてみつめる。
けれどゆまは、一度だって私の名前を呼んではくれなかった。
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