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「…これで惨殺この街では4件目の事例だ。いずれの被害者も大きな刺し傷や切り傷があります。かなり大型の物とは思いますが、まだ傷に一致する凶器が見つかっていません。
近年の似た事件に約半年前、数キロ離れた隣町、更に離れた場所の惨殺事件と合わせると6件目。今回の事件とこの2件の事件についての関係性はまだ不明。同一人物によるものか、この街のは1、2件目の模倣犯によるものかもしれません。この事件の関係性は別区域の警察とも連携を取って調べていく必要があります。
今回の被害者はIT企業大手Blueの社員。青嶋 和也、29歳。Blueでは優秀な成績を納める一方で、度々社内で意見のぶつかり合いを起こしていたという話も出ています。その為被害者に恨みを持つ人物居たとは思われます。」
「よし、各自全力で捜査にあたってくれ!」
「はい!」
警官達が事件の報告が終わると一人の大柄の男性が拳を机に叩きつけた。
「クソっ!この街で4回も惨殺を!」
「まあまあ、狩谷さん。血圧上がりますよ?」
「うるさい、若僧が!いいかお前もしっかりと捜査するだぞ、物部」
「はーい。」
狩谷と物部は親子程の歳が離れている。体躯も正反対で、筋肉質で大柄の狩谷に対し物部は綺麗な顔立ちだが、細く弱々しい身体をしている。
「…しかし…今回の事件の被害者も…酷いですよね…。こんな力任せの惨殺。傷跡は引っかかれたり噛みつかれたりのようで…。まるでライオンに襲われた様ですね。」
「うーん、しかし、こんなもの。何か特殊な刃物か、わざわざ剥製か…。」
腕組みをしている狩谷の隣で物部はスマホと被害者の写真と見比べている。
「何を見ている?」
「動物園の人のブログです。ライオンに引っかかれたって写真が載ってたので。」
「馬鹿もん!そんなもの機械に頼るな!」
狩谷の怒鳴り声に物部は思わず耳を塞いだ。
「全く、最近の奴はなんでもスマホ、スマホ。」
「いや、便利ですよ。家に居るハスキー犬もこれで世話が出来ますし。」
「そんな事はどうでもいい!それより、被害者の会社に聞き込みに行くぞ。ほら!すぐそこだから歩くぞ。」
「すぐそこって2駅歩くんですか!?」
「警官だろ!?足を使え!」
「ひぇー!」
狩谷と物部は警察署を出ていく。
そんな様子を他の警官が見ていた。
「なぁ、狩谷さんに新人の物部を付けていいのか?」
「さぁ?珍しく狩谷さんが後輩の面倒見ているし、物部も何だかんだで言う事を聞くんだよ。」
警官達は少し不思議なバディの背中を見送った。
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