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「…今の所Blueに居た、あの赤石というのが怪しいが…。」
狩谷は再び惨殺事件の資料を並べていた。
「すべての事件、夜から明け方に発生して、切り傷や刺し傷から鋭い刃物の様な物が凶器として推定されてます。」
「…そうだ、その凶器が全く見つからんし見当がつかない。そんな物を持っていれば目立つだろうし…。またそれに繋がるようなものすら見つかってない。
ただ彼はこの会社に半年前に来て、その前に居た会社は前に発生した惨殺事件の現場の近くだ。…何か繋がりがありそうだが…。」
「…発生してるのは…晴れで月がよく見えている日なんですね。」
「?」
物部の発言を狩谷は不思議そうに聞く。
「ほら、言わいる『狼男』ってやつですよ!赤石は一匹狼タイプって言われていたし、傷もそういう獣の物ですし、夜に月となれば…。」
「バカもん!お前は漫画の読み過ぎだ!」
またまた狩谷の大声に物部は耳を塞ぐ。
「狼男が月で変身するなど誰が決めた!?」
「いやー…。」
返事に戸惑う物部。荒く鼻息を出して狩谷は少し冷静さを戻す。
「…赤石…こいつが怪しいが証拠になり得るものが無い。」
「…せめて、その場にいた証拠でもあればいいんですが…。」
「…ふーむ…そうだな。」
狩谷はじっと惨殺の現場の写真を見つめた。そして天を仰いでうつむく。その足に何やら赤いものが付いてる。
「!」
狩谷の瞳孔が開いた。その様子を物部は見ていた。
「…物部…とりあえず今日は帰れ。」
「え?狩谷さんは?」
「俺はもう少し考える。」
「なら…。」
「家にハスキーが2頭も待ってるんだろ?気にするな。」
「…は、はい…。」
物部は少し渋々と荷物を整理をする。空には月が出ている。そんな事を見ながらロッカーに戻ろうとした。
「!?…いけね。…鍵忘れた。」
物部は鍵を取りに戻ると捜査本部の部屋に誰も残っていない。
「…狩谷さん?」
自分が部屋を出てきた状態のまま。何も変わっていない。
「狩谷さん、この事件への熱は確かに凄い…赤石は確かに怪しいけど…。」
記憶の中にある「気を付けて下さい。」の言葉妙に脳裏から蘇り木霊する。そこから今までの狩谷との話も記憶の泉から湧くよう戻ってくる。更には瞳孔が開いたあの瞬間。狩谷が見ていたものが映る。それは足に付いた赤い物体。毛だ…この色…赤石ものだろう。
「…。…。!…もしかして!!」
物部は慌てて警察署を出ていく。
《いけない!!俺のせいだ!!きっと狩谷さんは赤石を捕まえる為に
惨殺現場に彼の髪の毛を置いていくつもりだ!俺が現場に居た証拠さえあればなんていうから!狩谷さん!それは…許されないです!》
月夜の中を走り、惨殺発生現場にたどり着いた。まだ誰もいないのか。思い過ごしか。物部は呼吸を整えて、暗闇の細道へ足を入れた。
その時。
「!?」
自分の上に何が通過し、後ろの地面に落ちる音が。物部は銃を取り出し後ろへ構えると、そこにはお腹に大きな傷を負った狩谷の姿が。
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