第50話  涙が風に

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第50話  涙が風に

翌日すぐに高速道路に入り天空カフェへ向かった。 サービスエリアでパンとヨーグルトを買って食べながら走った。 リンは助手席で窓の外を無表情のまま眺めている。 何かリンをホッとさせる話をしたいと思って考えた。 「なあリン、タイルの入ったアルミ缶ってソファーの後ろに飾ってあるやつか?」 「えっ………そうだよ」 「出会った頃、リンが着替える時にオレが後ろを向いた事があったんだけどさ、実はあのアルミ缶に着替えてるリンが映ってたんだ、でも黙ってオレは見てた、最低な奴だろう」そう言って少し笑った。 「うん、最低だね…………でも知ってたよ」 「えっ…………知ってたの……何で何も言わなかったの?」 「だって、家族との思い出の入った缶に、私と神様からのご褒美のタクちゃんが映ってるんだもの、嬉しくて…………」 「……………………」 「リン、運転変わってくれ、涙で前が見えない」 オレは安全な場所を探して車を止めた。 疲れたら交代しながら運転し、翌日天空カフェへ到着した。千草さんや綾乃さん、新さんも心配そうに迎えてくれた。 「大丈夫?プリンちゃん、大変だったね」千草さんがリンの肩をポンポンと叩いた。 「はい…………心配かけてすみません」 「大丈夫よプリンちゃん、きっとすぐに治るわよ」綾乃さんも慰めてくれた。 「プリンちゃん大丈夫だよ、今書かれてる心のない言葉は時間やネットの波に流されて無くなっていくよ、そして後には心のこもった言葉だけが残るよ、だからゆっくり休んだら良いさ」 新さんは優しい目で話してくれた。 「そうですよねえ新さん」オレはすがるように言った。 「タクマ君、こんな時よ!しっかりプリンちゃんを支えるのは」綾乃さんがおれを見た。 「はい…………」 「これでも飲んで落ち着いて」千草さんはコーヒーを入れてくれた。 「タクマ君、これからどうするの?」 「オレは何の力もなくて何も出来ないんです…………でも家に帰って両親にリンと2人で生きて行きたいと話すつもりです」 「そう…………じゃあ頑張ってね」綾乃さんはオレの肩をポンと叩いた。 オレはキャンピングカーから自転車を引っ張り出した。 「リン、オレはこれから両親にリンと生きていくって言ってくる、必ず迎えにくるから絶対に待ってろよ、絶対に!」 「えっ…………でも…………」 「大丈夫だ!絶対に待ってろよ」リンの手を強く握った。 「すみません、オレが戻ってくるまでリンの事をよろしくお願いします」そう言って自転車に乗り東京へ向かった。 風が涙を後ろへ飛ばした。 「結局オレ1人じゃあ何にも出来ないんだ…………」そう思うと涙が止まらない。 でも、リンを何とかしたい、そう思ってひたすらペダルを踏みつけた。
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