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第52話 輝いた日々
天空カフェの駐車場で目が覚めた。
「タクちゃん本当に迎えに来てくれるかなあ…………」少し不安になった。
「それにタクちゃんの両親に気に入ってもらえるかしら…………」さらに不安になった。
キャンピングカーから降りてカフェに行き千草さんに相談した。
「おはようございます、千草さん」
「おはよう、大丈夫プリンちゃん?」
「はい、あのう……タクマくんの両親に会うことを考えると、髪を切って黒くしたいと思うんですけど、何処か近くで美容室を知りませんか?」
「美容室か……私地元じゃないしいつも東京の美容室に行ってるからなあ………………」
「そうですか…………」
「あっそうだ、ちょっと待って」そう言ってテラスの席にいる女の子に声をかけた。
「希和ちゃん、どっか近くで美容室知らない?」
「はい、私の叔母さんが美容室やってますけど…………そこで良ければ聞いてみましょうか?」
「お願いしたいわ、髪を切って黒くしたいの」
「はい、聞いてみます」
彼女はスマホで確認した。
「大丈夫だそうです」
「この子不良少女の希和ちゃん」
「千草さん!そんなこと言わないで下さい」
「だって高校を辞めてバイクで遊び回ってるんでしょう?」
「う…………そうですけど…………」
「希和ちゃん美容室の場所を教えてくれない」
「はい……あのう……プリンさんですよね、私ユーチューブみてます、キャンピングカーで行くんですか?」
「うん、他に無いから」
「私も乗せてもらえませんか?またここに戻ってくるんですよね?」
「そうだけど…………」
「お願いします」
両手を合わせて必死に頼んでいる。
「分かったわ、じゃあ一緒に行こう」
そう言って、天空カフェを出発した。
「私プリンさんが羨ましいです」彼女はポツリと言った。
「そう……今、炎上してて大変だけどね」
「でもそれはプリンさんに光があたって輝いたからだと思うんです、光があたったから影が出来たんだと思うんです、私なんか何も輝くことがないから影もできないんです」
そう言って悲しそうな顔をした。
「そう……私、輝いたのかなあ…………」
「いっぱい輝いてますよ、だって日本中に沢山のフアンがいるんだもの」
彼女は夢見るような眼差しをした。
美容室に着いたら髪をバッサリと切って黒く染めた。
「タクちゃんの両親は気に入ってくれるかなあ」そう思いながら鏡で確認した。プリンでは無くなって寒河江凛に戻った気がした。
帰り道で希和ちゃんは高校を辞めた理由を切なそうな顔をして話してくれた。
「希和ちゃんも大変だったのねえ」そう言って2人で少し笑った。
何か少しだけ肩の力が抜けたような気がした。
髪を切ったせいなのか、不良少女と話したせいなのかはわからないけど。
駐車場に到着すると「ありがとうございました」そう言って希和ちゃんはテラスの方へ走っていった。
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