新生

26/44
前へ
/222ページ
次へ
‘白川さん、引っ越しされたみたいよ’ やっぱり気にし過ぎではない…きた…白川さんは恵麻ちゃんのお宅。東京にいることも言えるくらいなら、白川さんもいない地元に戻れるんじゃない?そう言われているようだ。そう言われても仕方ないんだけど、あの場に戻りたくないんだ。 少し視線を落とした私に ‘良子?聞こえる?’ お母さんの声が聞こえてくる。 「もしもし、おばちゃん?俺、颯佑」 ‘えっ…?颯佑くん良子と一緒なの…?’ 「先に会ってごめんね。再会して告白して付き合ってるから」 ‘良子と…颯佑くんが?’ 「そう」 ‘今、颯佑くんが東京に行ってるってこと?’ 「そう」 ‘…嬉しいような…嬉しいんだけど…’ 言葉とは裏腹に暗いトーンの音色が聞こえて 「お母さん、誰も悪くないから。私が言えなかっただけで…とにかく東京で元気にやってるから。今日はそれだけ…じゃあね」 通話を終えようとする私の手を颯ちゃんが止めた。 「おばちゃん。リョウは毎日頑張ってるよ。ただそこの空気には触れたくないだけだから…気を悪くしないで」 彼がそう言ってからすぐには返事がなく、彼は‘きるよ’と通話を終えた。
/222ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2581人が本棚に入れています
本棚に追加