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イベントスタート
時計台広場に戻ると、16時きっかりにパンツスーツ姿の熟年女性がマイクを持って現れた。
「本日は弊社主催の『ビューティー☆お見合い』にご参加いただき、誠にありがとうございます。『サロン・ド・ビューティー』代表取締役の三橋です」
背筋を伸ばして腹から出す声は若々しく、よく通る。
「弊社スタッフによるメイクで、華麗に変身した女性参加者様がすでに公園内を散策していらっしゃいます。
より自然な出会いを演出するため、お互いにイベント参加者であることには触れず、交流を図ってください。
それでは19時までフリータイムといたします。GOOD LUCK!」
その声を合図に周りの男どもが一斉に走り出す。
「何やってんだ、行くぞ!」
松下が僕の腕を掴んで引っ張る。
「行くってどこへ?」
「説明聞いてなかったのかよ! 公園の中にいる女の子が入れ喰い状態なんだとよ!」
「えっ? そんなこと言ってたっけ?」
「チッ、ここからは単独行動で行こうぜ。健闘を祈る!」
松下も他の男たちと同様、風のように去っていった。
要領を得ないまま、僕と杉野は一緒に松下の後を追って歩き出した。
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