——エピローグ(最終話)

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お稽古の前に、シスターアンヌにの事を尋ねてみた。クリス、という名のその少年が抱えた事情にすっかり同調してしまった私は……彼に会うのが楽しみで仕方がない。 『クリスは、ふた月ほど前に孤児院にやって来たばかりの子です。 幼い頃から両親の虐待に遭い、心を閉ざした彼は他の子供たちと馴染めず、いつも一人きりで、空を見上げていることが多くて……。 それが、子供たちがリリアナ先生に習ったピアノを弾き始めてから、こっそり隠れて練習を眺めているので、クリスにもピアノを習ってみないかと尋ねたのですが。 他の子たちが……ちょっとした意地悪というか、悪意はないのでしょうけれど、クリスは『心が空っぽ』だから弾けない、リリアナ先生もそう言っていた……ピアノは心で弾くものだからと。 リリアナ先生に何度も会いに行こうとしたのは、みんなに言われたことが信じられず、心が空っぽだと本当にピアノが弾けないのか、先生に直接聞こうとしたと言うのです』 悶絶してしまった——なんて可愛い『事情』なのっっ。
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