——エピローグ(最終話)

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続いて馬車を降りたリュシアンがその頬を緩め、少し呆れたようにつぶやいた。 「リリアナ様もあなたと同様、婚礼の前日にまで稽古を付けているようですね」 リュシアンの言葉には応えず、旦那様は……何かを察したように、その『拙い音』にじっと聴き入っている。 旦那様は静かにまばたきを繰り返しながら、傾きかけた夕陽を眩しそうに仰いだ——穏やかな微笑みを、茜色に染めながら。 旦那様の耳に届くのは、兄妹が大好きだった、懐かしいあの旋律。 遠い目をしたその眼裏に映るのは、ピアノを弾く在りし日のお母様と、それを傍らで聴く幼い兄妹の幸せな笑顔------- 「やっと会えましたね……母上、アリエル」 「公爵、何か?」 心地よい夕風が、首を傾げるリュシアンの肩をかすめ、空を見上げる旦那様の宵闇色の髪をさらう。 旋律は風に乗り、空高く昇っていく。 天上にいる大切な人たちにも、その想いが届くように。 長いあいだ追い求め、探し続けた。 そして出逢うべくして二人は出逢った。 幸せを運ぶ、『星月夜(ほしつきよ)』のもとに——。 《本編・完》 ======================== *作者の力量足らずの拙作を、本編のラストまで読み進めてくださり有難うございました* 《もしよろしければ作品に対しての評価、コメント、フォローなど頂けますと今後の大きな励みになります。どうぞよろしくお願いいたします》 *このあと、スター特典として一話(三分割)完結の番外編(ラブコメ要素?)を出します。のんびり更新にもかかわらず見捨てずお星さまを送って下さった皆様っ、本当に有難うございました。番外編の方も、どうか楽しんでいただけますように……* 《スター特典予告・番外編 / ディートフリート視点で綴る婚礼当日》 いよいよ迎えた新婚初夜——。さて、二人は無事に結ばれるのでしょうか?!
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