大学

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 それから二日後、美緒は名残惜しそうにしながら帰って行った。  美緒はあれから何度も母に人形のことを訊くように言ってきたけれど、わたしはなかなか母に訊く勇気が持てない。  風呂から上がったわたしは、ベッドに腰かけて向かいに立てかけた姿見に目を向ける。  そこに映る陰気な顔と目を合わせながら、頬にうっすらと残る傷痕を指先で辿る。  ――ブブブッ  座卓に置いたスマホが鳴った。  ハッとしてスマホを取り上げれば、画面には美緒からのメールを知らせる通知が表示されている。  ――写真送るの忘れてた! もう伯母さんに人形のこと訊いてみた? 何かわかったら教えてください  添付されたファイルを開くと、写し出されたのは大学のカフェで美緒が見せてくれたあの写真だった。  わたしは無意識に頬を撫でながら、メールフォームを呼び出した。  ――この人形、知ってる?  たったそれだけを添えて、写真を母に送った。
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