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「もうすぐ着くよ! ……そんな顔しないの。おばあちゃんたち、咲那に会うのを楽しみにしてるんだから」
高速を降りて市街地を抜けると車はいよいよ曲がりくねった山道を登っていく。
窓からは山を覆う木々とときおり現れる木造の家、荒れた草地に放置された車などが見えた。
「……おばあちゃんたちが会いに来てくれればいいのに」
徐々に道は狭くなり、おばあちゃんの家に近づくほど道は険しくなった。
断崖すれすれの道は車一台がやっと通れるほどの狭さで、崖下を流れる川がちらちら見えた。
「あ、ほら! あそこ、おばあちゃんが待ってるよ」
何度目かの急なカーブを曲がったとき、木々を背負うように立つ大きな家とその前に立つ小さな人影が見えた。
車は手を振るおばあちゃんの前を横切って家のすぐ横に停車した。
「よく来たね。疲れたでしょう、中でゆっくりしなね」
わたしは車を降りると、嬉しそうに笑うおばあちゃんの背中を追って家の中に入った。
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