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序章
ガァンッ!と激しい音を立て、鉄の剣が弾かれ宙を飛ぶ。
その剣が乾いた音と共に地に落ちるのと同時、ドサッとその場に尻餅をついたのは二十歳程の銃士隊の男だった。
時刻は午前。
昼には早く、朝というには陽が上りすぎている、そんな頃合いで、銃士たちがいつも通り訓練場にて各々訓練に励んでいる──まさにその最中での出来事だった。
尻餅をついた男のすぐ目の前に立ち、蔑む様な据えた目を男へ向けていたのは、同じく銃士隊に所属する今年十七になる少年だ。
片手には剣。
金髪碧眼のこの少年は、無言のまま男を見下ろし、怒のオーラを纏っている。
尻餅をついた男の額からは、少年の剣先が掠めた為に赤い血が一筋浮かんでいる。
少年に剣で押し負けた男は、手が痺れるのかもう一方の手で利き手を掴み、半ば怒り、半ば恐れる様な表情でギッと少年を睨み上げた。
ざわっとにわかに銃士隊の間にざわめきと緊張が走る。
と、そこへ──
「これは一体、どういう事だ!?」
声を上げたのは銃士隊長だった。
隊の誰かが呼んだのだろう。
少年はギッとした目でじろりと隊長から、遠巻きにこちらを見ている銃士仲間へと目を転じる。
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