私が変われた理由

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「あ!」 デート中に困っている様子の老婦人を見つけた。 キャリーバッグを脇に置き、歩道橋の前で途方に暮れていた。 「ごめん思侑くん、ちょっと行ってきてもいい?」 「え?」 思侑とのデート中ではあるが、それよりも老婦人を優先し助けることにした。 心陽はおばあちゃんっ子で、つい一昨年に亡くなってしまった祖母のことが思い出され居ても立っても居られなくなったのだ。 「おばあちゃん、大丈夫? どこへ行こうとしてるの?」 「ちょっと歩道橋向こうの停留所まで・・・」 「なら私が荷物を持ってあげるよ!」 「どうもありがとう」 荷物を持ったところで思侑がやってきた。 「それをバス停まで運ぶの? なら俺が持つよ」 「あ、ありがとう・・・」 思侑が荷物を持ってくれた。 ふいの優しさに心が動く。 ―――折角のデートなのに時間を取らせちゃったな。 「本当にありがとうねぇ」 「いえいえ。 おばあちゃんお気を付けて」 おばあちゃんと別れ、思侑に謝るように言った。 「急に離れちゃってごめんね。 お詫びに何か奢るよ」 だが思侑は首を横に振っている。 「いや、いいよ。 ああいう時にスッと行動できるのは素直に凄いと思う」 「でも・・・」 その時思侑の額から汗が落ちた。 暑い中重たい荷物を持ってくれていたからだ。 「あ、ハンカチを貸してあげる!」 「そんな、いいのに・・・」 この後は普通にデートを楽しんだ。 そして別れの時間がやってくる。 「今日はありがとう。 また学校でね」 「あのさ、よかったらツーショットを撮らない?」 「え? いいけど・・・」 ―――付き合った日に記念として撮りたいって言ったけど、断られたんだよね。 ―――でも誘われて嬉しいかも。 朝は暑いからくっつきたくないといっていたのに随分と距離が近い。 更にその時急に抱き締められたのだ。 周りには通行人がいるため恥ずかしさから顔が赤くなったのが分かった。 「な・・・ッ!?」 「またデートしような」 「う、うん・・・」 そう言われ手を挙げて走り去る思侑の後ろ姿から目が離せなかった。 今日一番の心臓のドキドキがいつまで経っても治まらない。 ―――急に触れられたから、びっくりした・・・。 ―――もしかして男の人に触られたのって初めて? ようやく動揺から落ち着き、ポケットの中が妙に寂しいことに気付く。 ―――・・・あれ? ―――そう言えば、ハンカチを返してもらってない! ―――思侑くんのことだから洗ってから返すとか言われそうだけど、それは申し訳ないよね。 思侑を追いかけようとしたのだが、思侑は既に友達と合流していた。 友達はクラスでよく一緒にいるメンバーだった。 ―――流石に今から行ったらマズいかぁ・・・。 しかし引き返そうとした時、心を切り裂くような会話の内容が聞こえてしまったのだ。 「思侑ー! 彼女とのデートどうだったー?」 「いや、別に・・・」 「この夏はたくさんデートに誘うんだぞ? これは罰ゲームなんだからなッ!!」 ―――罰ゲーム・・・!? 内容を聞いているとナンパゲームをしていて、唯一失敗した思侑がブスである心陽に告白をするという罰ゲームを受けていたらしいということを知る。 最終的には心陽が本気になったところを振るというところまでがセットのシナリオらしかった。 ―――何よ、それ・・・。 確かに思い返せば手を繋ごうとしたら断られたり、予定を立てようとしても曖昧な返事をされた。 ―――・・・許せない、私を巻き込んで陰では仲間とからかっていたんだ。 ―――絶対に思侑くんを見返してやるッ!! それを聞いて心陽は変わる決意をしたのだ。
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