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翌日の日曜日に朝から思侑を呼び出した。 SNSなどを利用しなかったのは、会って姿を見せておきたいと思ったからだ。
―――今日の私の服装は家で過ごす時と同じのただのジャージ。
―――思侑くんがこの姿を見て引いたら、私は本当にショックを受ける・・・。
―――でもありのままの姿を見てほしい。
―――そうしたら、それをバネにして私は頑張れるから。
デートではないから着飾らなくてもいいと言い来てもらった。
「どうしたの?」
やってきた思侑は確かにデートの時程着飾ってはいないが、身なりはきちんとしていた。
―――私のためなのか、これが普通なのか。
―――それでも身なりをきちんとしてくれるのは好感が持てる・・・。
「私の姿を見て何か思わない?」
「・・・? いや、普通に動きやすそうだなって」
答えは予想していない変わったものだった。
「それだけ?」
「そうだけど?」
「・・・」
思っていた反応とは違い少し戸惑ってしまう。
「本当にどうしたのさ?」
「な、夏休み、私に予定ができちゃったの! だから会えなくなった」
「え? そう・・・」
思侑は視線をそらした。 心陽は分かっているのだ。 思侑が内心では会えなくなったことを喜んでいることを。
「でも9月1日の始業式の日。 話したいことがあるから空き教室へ来てほしいの」
「え?」
「それじゃあ」
「あ、ちょっと待って!」
言わなければいけなかったことをもう一つ忘れていたため立ち止まった。
「それと夏休みの間はやりたいことに集中したいから、連絡はしてこないでくれる?」
「そんな、急にどうして・・・」
それだけを言ってもう振り返ることもしなかった。 思侑は納得していないようだったが、心陽には関係なかった。
―――キッパリ言って正解。
―――本番はこれからだけど、今でも少しはスッキリしたわ。
家に着くなり姉に電話する。
「お姉ちゃん?」
『どうしたの、急に電話してきたりして?』
「私、変わりたいの!!」
『変わる?』
「そう! だから痩せ方とか、正しい食事とかメイクとか色々と教えて!!」
『えぇ!? 本当に急にどうしたのさ? 今まで何とかした方がいいって言っても変わろうとしなかったのに』
「乙女心は秋の空! 気が変わったの!!」
姉は美容系の専門学校に通っている。 だからすぐに頼れると思っていた。
『・・・分かった。 途中で音を上げない?』
「うん。 今ならどんなに辛くても食らい付いていけそうな気がする」
『じゃあ、私も本気でいくからね』
姉は忙しいながらも、夏休みの間心陽を一所懸命にサポートしてくれた。
―――私は思侑くんを見返すために美しくなろうと決めた。
―――こんな美女を振って後悔したって、絶対に思わせてやる!!
そして美しい状態で学校へ行き思侑を振ろうと決めたのだ。
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