13人が本棚に入れています
本棚に追加
二学期の始まる始業式の日。 流石に期間が短いため万全の状態とは言い難い。 それでも姉の尽力もあり、自身でも見違えたと思える程にはなった。
その証拠に学校へ行くと以前とは違う声が周りから聞こえてきたのだ。
「誰だ、あの娘?」
「あんな美女いたっけ?」
―――みんな私に注目している。
―――努力したらこんなにも変われるんだ。
何となく誇らしいような恥ずかしいような時間を歩き、自分の席に座ったところで心陽だと分かったのか驚かれた。
―――今日から私は生まれ変わったの。
―――これからも女子力を磨いて完璧な女性を目指す!!
思侑が登校してくると思侑の前へ立った。
「え!? その恰好どうし・・・」
「言った通り話があるの。 ちょっと来てくれる?」
二人は空き教室へ移動した。
「・・・話って?」
「うん。 私と別れてほしい」
「・・・え!?」
「私、聞いたの。 思侑くんは私と罰ゲームで付き合っているって」
「ッ・・・」
その言葉に反応を見せたことにやはり事実なのだと分かった。
「それにショックで泣いていたらこんなにも痩せちゃった」
おどけてみせると思侑が言った。
「・・・素直に努力したって言えばいいのに」
「それで? 別れてくれる?」
そう言うと思侑は即答した。
「いや、俺は別れたくない!!」
「それは私が変わったから?」
「違う。 確かに最初は罰ゲームで付き合っていたことは認める。 でも俺は次第に心陽の中身にちゃんと惚れていったんだ!!」
「ッ・・・」
―――初めて、名前を呼ばれた・・・。
いつもは“君”呼びだったため動揺してしまった。
「そ、その証拠は?」
そう言うとツーショットを見せてきた。 そこには夏休み前の酷い自分と思侑が笑顔で写っていた。 もっとも心陽は引きつり気味の笑顔で残念な容姿と相まって殊更酷いものになっていたが。
「容姿だけしか見ていなかったら一緒に写真なんか撮らない。 それに別れ際に抱き締めたのだって公衆の面前だった。 心陽のことが好きじゃなかったらそこまではしないはずだ」
少しだけ心が揺らいだが、すぐに持ち直した。
「それも罰ゲームとして命令されていた?」
「されていない。 デートの内容は完全に俺任せだった。 じゃあ逆に聞くけど、心陽はどうして俺と付き合ってくれたんだ?」
「ッ、それは・・・」
告白されたから誰でもよかったなんて言えなかった。 結局は自分も思侑と似たようなことをしていたのだ。
「俺は本気で心陽に惚れたんだ。 だからよかったら、俺と一緒にアイツらを見返してほしい」
アイツらというのは思侑がよくいるグループのことだ。
「・・・別れないでほしいんだ」
「・・・それ、信じてもいいの?」
「もちろん。 俺は嫌なことは嫌だってハッキリと言えるように、中身が変われるよう努力する」
「もしその言葉が嘘だったら?」
「俺を振ってくれても構わない。 そしたら俺は更に変われるよう努力をして、心陽をまた惚れさせるから」
「その言葉、嬉しい」
「じゃあ!」
「でも、無理です」
「え、どうして・・・」
「もし私のことを中身で本気で好きだと思っていてくれたなら、外見が変わる前に口に出してほしかった。
連絡しないでと言った一ヶ月間、本当に連絡してこなかったということは、やっぱり本気じゃなかったっていうことなのよ」
「それは・・・」
「でも、感謝はしている。 思侑くんが罰ゲームで告白してきてくれたから、私は変わることができたんだから」
そう言って心陽は颯爽と思侑のもとを去っていったのだ。
-END-
最初のコメントを投稿しよう!