act.2 それぞれのHappybirthday

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   そして新学期だ。  俺は無事二年に進級し、進路指導で話した通りの進学クラスに振り分けられた。  五教科に重きを置いた受験に則したカリキュラムになる。けどまだ俺は、肝心の志望校が決まらない。  どっちにしても地元に農大は無いから、どこかには行く事にはなる。  今回、美音がとんでもなく遠くの土地で過ごすことになってしまったせいか、とりあえず今は日本国内なら問題無しと思ってしまう自分がなんか不思議だ。  間違いなく俺の距離感は価値観がズレた。 「まぁ志望校は大体でいいと思うが、今は通常の授業も大事だぞ。進学コースだから五教科には力を入れてくれるだろうし」  父ちゃんが言う。確かに二年になったから通常の授業も難しくなっている。バイオに関わる授業も多くなってくる。  この先の進路をそっち方向に行くのなら、それも疎かに出来ない。  バイオテクノロジー(BT領域)とは、発酵技術などで微生物の活用技術を知り、生物が持つ力を人間生活に役立てる方法や考え方の研究だ。  うちの学校には専門のクリーンルームとかは無いので高度な実験とかは出来ないが、それでも園芸部の顧問・中川祐介先生の植物の組織培養における研究はとても注目されている。  試験管の中で、植物を組織(葉・茎・根など)から育て、植物は、身体の一部さえ残っていれば元通りの植物体に戻る力(全能性)がある。組織から根や葉が生える様子を観察しながら、植物の再生能力について学ぶのだ。  この辺りの授業が始まると、追いついて行けなくなった連中が園芸部に入部してくるらしい。顧問の中川先生に泣きついて補習をしてもらう為だとか。  それが以前緒方先輩の言っていた幽霊部員の正体だ。俺の学年でもきっとそうなると教えられた。  絶対に実質的な部活の戦力にはならないから、当てにするなとは言われてる。ただ、廃部にならんための帳尻合わせの頭数と割り切れと。  まぁ、俺達は我が道を行くから良い。  とりあえず新一年生も6名ほど入部したし、これでいきなり廃部は無いだろう。 「新入部員が6人は嬉しいな、これで水撒き当番もちょっと楽だぞ」  緒形先輩は言うが、それ一年生が誰も辞めなければだよね。既に二人ほど出席率が悪い。  まぁ、いいけど。実は明らかに面白い新入部員がいる。  ひとりは花卉農家でちょっと郊外に直売店舗もあるという家の娘、美空夏季(なつき)。もうひとりは兼業農家の家の息子の榎本将大(しょうた)だ。  この二人は、去年の文化祭で俺達が作って販売した水耕栽培のボトルを見て園芸部に入って来たのだ。  ああいう発想でもっと色んな物を作ってみたいという希望だった。水耕栽培をもっと詳しく勉強したいと。  美空も榎本もそれぞれ友達を引き連れて入部したので、コミュニケーションはほぼ問題ない。今の所一年生同士はうまくやれてるようだ。    さて、部活は水撒きや温室の温度管理を教えるところからだな。みんな残ってくれれば良いけど。  
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