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そして我が家の弟妹もこちらの学校に転校となった。
凪紗は割と近所の小学校に転入した。そこは父ちゃんと母ちゃんも通った小学校だという。
俺達と違って案外社交的だったりする凪紗は大阪弁も話す。ただ三ノ宮というこの辺にはない苗字の凪紗が虐められないか母ちゃんは心配していた。
しかし、福島の超田舎に大阪からの転校生という滅多にないシチュエーションを持った凪紗は、その明るい性格で割と早くクラスに馴染んでいった。
だが一部には虐めるような行動に出る連中もいたらしいが、そこは凪紗なので大人しい性格ではない。きっちりやり返し、その連中を傘下に治めたという。
いやいや、やっぱり凪紗は逞しい。転校生イビリに無縁な妹で兄ちゃんは安心した。
問題は支援学校に入学が決まった真也だった。普通の学校の様にイジメの心配は少ないとは言うし、学校にはスクールバスで通うというから通学の心配は少ない。
だが、それでも真也を心配したうちの両親は、その手続きには必ず夫婦で着いて行った。
そして肝心の学校を見学に行った時に、ある驚きの事実を知ったそうだ。
「支援学校の真也の担任が小杉カイって言ってな」
「うん」
いつものように父ちゃんの書斎に寄って声を掛けたら、ちょっと待てと言われたのだ。話を聞いていけと。
「俺の弟だ、腹違いの」
「え?」
その時、ばあちゃんからずっと昔に話にだけ聞いていた父ちゃんの義理の弟の事を、初めて父ちゃん自身の口から聞いた。
小杉カイというその人は、大阪から届いた出雲真也という子供の転校手続きの書類を見た時から、それが父ちゃんの息子だと知って会える事を楽しみに待っていてくれたそうだ。
いつかは父ちゃん本人にも会えるかとも思っていたが、まさか早々にご本人が支援学校にやってくるとは思わず相当驚かれたと言っていた。
「小学校の先生になったとは聞いていたんだ。てっきり宮城にいると思っていた、驚いたよ」
子供の頃の大病が元で、自分には子供が残せないと知ってから教師を目指した人だと。俺も中学の頃に一度だけ会っている筈だと言われた。
そんなお客さんが我が家に来た記憶、あんまり覚えが無いんだけど。顔を見れば思い出すとは思うけどね。
「立派になっていた、良かったよ」
こんな事もあるんだな、と父ちゃんは嬉しそうだった。
本当にここしばらくで我が家には色々あった。
そして美音も、アメリカで無事にカナ姉と再会。
待ち合わせしたセントラルパークのシープメドウと言う芝生の拡がる所で会えたという。
カナ姉は昂輝が、美音はウォルフがそれぞれ家に迎えに行って無事に公園で合流。
俺が贈った指輪とペンダントトップをちゃんと身に着けた美音と、これまた相変わらず綺麗なカナ姉が美音をギューっと抱き締めた写メが昂輝のスマホから届く。ふたりともとても楽しそうだ。
良かった、これで美音もまた少し心強くなったかな。
昂輝、美音もカナ姉もしっかり護ってくれよ。お前が頼りなんだから。
ただ、美音を迎えに行ったのがウォルフだったというのがちょっと不安が残ったのはこの際我慢する。
俺もこっちで、この家族の為にできる事を頑張るからさ。
NY セントラルパーク
シープメドウ。
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