53人が本棚に入れています
本棚に追加
美音がアメリカに行って半年が過ぎた頃、ようやく美音に関する裁判の一つが結審した。
まずは相羽恒次の事件。
美音に対する誘拐未遂事件と仁科圭吾、椎名深雪への暴行指示、その他色々ある余罪の判決はその悪質性もあいまって執行猶予無しの実刑懲役5年。出所後には相羽美音への永久的な接近禁止令が言い渡された。
この件に関しての相羽恒次側からの上告は無し。そのまま刑が確定した。
問題があり、裁判が長引いているのは志田真由子の件だ。
彼女側の弁護士は、示談が絶望的に無理と分かると事件発生時の彼女は『心神耗弱』の状態であったと主張し始めたのだ。
これには俺よりも北がキレた。『心神耗弱』は罪逃れのための伝家の宝刀じゃないと。
だが俺達に何か出来る訳はない。
しかしウチの父ちゃんは被害者側の弁護士として、いかに志田真由子が計画性を持ってこの犯罪を行ったか。
事件の為のアカウントを事前に5つも作り、わざわざ隣の市のネットカフェまで出掛けて犯行に及んだその周到な手口は、心神耗弱の状態で行える様な犯罪では無い事を主張した。
それを実証する為の証拠を集め、検察との交渉に臨んだのだ。
結果、志田真由子の『心神耗弱』は認められずにようやく一審を終えた所だ。成人なら名誉毀損のみを取っても三年以下の懲役、又は禁固。あるいは50万円以下の罰金という。
だが、この事件には相羽美音の誘拐未遂事件という付加がついた。表沙汰には出来ないが社会的影響も小さくない事件だ。
判決は執行猶予(保護観察)のついた懲役だったが志田側は即時抗告。未だに争う姿勢を見せている。
当然うちも抗告、こうなれば執行猶予等は認めない。
志田の親はあくまで自分の娘に前科を付けたく無いのだろうと想像はできる。最初は金の力でなんとでもなると思っていたあたりが相当鼻につくが。
じいちゃんがいなかったら今頃美音はマスコミの餌食になって、人生をメチャクチャにされていたかもしれないんだ。それを思ったら絶対に志田親子は許せない。
美音の父親が出雲 櫂である限り、ウチがこの件で妥協することは一切無い。
裁判の女神 テミス
最初のコメントを投稿しよう!