act.3 秋

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 家に着くともう父ちゃんも帰宅していた。急いで帰った俺を見て、ああ、と言う顔だ。 「お前なら行くと思ったよ、ほら旅費だ。持っていけ」 「要らない、ちゃんと貯めてある」  その為にずっとバイトをしていたんだ。その封筒は要らないよ父ちゃん。 「本当なら俺が行きたいんだ。俺の分もしっかり美音を元気付けてこい」  父ちゃんに無理やり封筒を握らされる。きっと母ちゃんが準備してたんだな、この金は二人が美音を想う気持ちだ。 「美音は我慢強いから、様子がおかしいのに気がついたディアが病院に運んだ時にはもう手術しかない状態だったって。ディアに申し訳ないと謝られてしまったよ」  じいちゃんが言う。それは分かるような気がする。  しかもそこはアメリカだから、美音にも病院に行くこと自体に不安があったのではないだろうかと思う。  とりあえず手術自体は成功しているそうだ。だがじいちゃんは美音に会いにいく事をディアさんに告げた、大事な孫がきっと心細いだろうと。  俺とじいちゃんは明日の始発のJRで成田に向かう。年末のこの時期だから、本来アメリカ行きの航空チケットを取るのは難しい。しかしそこはじいちゃんの昔のツテで既に手配済みだそうだ、さすが。  俺も急いで荷造りをする。けど適当に着替え位だ、足らないものは向こうで買えばいい。  ただ机の上のじいちゃんにもらった時計が目についた。じいちゃんの飛行機が絶対に落ちないという強力なお守りだ。縁起担ぎで高校受験の時にじいちゃんにもらった。  じいちゃんのおじいちゃんの形見というこの時計を、明日はじいちゃんに着けてもらって飛行機に乗ってもらおう。きっと俺もじいちゃんも護ってくれるはずだ。
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