act.3 秋

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   日本を出たのが昼過ぎだったので、アメリカの空港には時差の関係で前日昼頃の到着だった。  とても賑やかなクリスマスカラー一色に彩られている空港の到着ゲートから出ると、いきなりじいちゃんの名を呼ぶ声がした。 「Shiva, did you come to pick me up?(シヴァ、迎えに来てくれたのか)」 「Yes Alfort, it's been a long time.(はい、アルフォート。お久しぶりですね)」  浅黒い肌の背の高いイケメンおじさんだ。この人もじいちゃんの身内だろうか。 「拓海、彼がアーケイディアの次男でシヴァだよ。街で父親と一緒にインド料理の店を経営してる。カレーが中心のチェーンだ」  ディアおばさんの息子さんか。じゃあ父ちゃんと同じ位の年代かな。どうも外人の年齢は分からん。 「えっと…I'm Takumi Izumo」 「日本語でいいよ、僕は日本に留学経験がある。昂輝とも簡単な日常会話なら出来てるよ」  そうか、良かった。俺は学校で習ってる様な教科書英語位しか分からない。嫌いではないからとりあえずヒアリングは出来る程度だ。 「初めまして、美音の兄の出雲拓海です、美音がお世話になっています」  この人が大事な美音のホストファミリーって事だな。 「君がタクミ…そうか、ミネが大好きだと言っていたお兄さんだね」  その人が優しい眼で俺を見ていた。美音がそんな事を? 「おじさん達が大丈夫なら、このままミネの病院に行きましょうか?それとも我が家で一休みしますか?」  その人が言ってくれる。じいちゃんとその人の後をデイバッグを背負って追う俺だった。 「このまま病院に連れて行ってくれるかい?私も拓海も早く美音の顔が見たいんだ」 「承知しました」  空港の近くにシヴァさんが車を停めていた。その運転席にはとても綺麗な白人の女性だ。多分、年齢はやっぱり母ちゃん位。亜麻色の長い髪をひとつにまとめていて、その海のような青い瞳が俺を見る。 「コンニチワ、タクミ?」  え?この人も俺の名前を知ってるのか? 「は、はい、出雲拓海です」  返事をしながら俺が戸惑っていると、とにかく車に乗るようにじいちゃんに促される。急いで後部座席に滑り込んだ。  すぐに車が発進する。 「タクミ、彼女は私の妻です。アリッサと言います」  シヴァさんの奥さんなんだ、綺麗な人だ。 「ヨロシクね、タクミ。ワタシはミネのナカヨシさんです」 「はい、こちらこそよろしくお願いします」  アリッサさんはシヴァさんほど日本語は流暢じゃないらしい。でも美音と仲良くしてくれているのか。 「ミネ、今ちょっと元気ナイ。でもタクミとアルの顔を見たらきっとウレシイ」  やはりそうなのか、俺にはいつも元気に絵を描いているって言ってたのにな。やっぱり強がっていたか。  だからいつでも呼べって言ったのに。  いや…本当は俺も知っていたんだ、だって俺もあんなに寂しかったんだから。 「大丈夫、拓海が来たんだから。美音は大丈夫だ」  じいちゃんの温かい手が俺の背中を撫でる。  そうだ、俺もきっと大丈夫だ。  もうすぐ美音に会えるんだから。
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