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しばらくして、じいちゃんとシヴァさんが戻って来た。
美音の傍らで、美音と手を繋いだままの俺を見てじいちゃんが笑う。
「拓海、美音はまだちょっと入院が必要なんだって。あと一週間は様子が見たいって」
「そうなんだ」
今は盲腸…虫垂炎は、殆んど抗生物質の投与や内視鏡の手術で治してしまうものらしいのに、美音はわざわざ切除手術になった。どれだけ酷かった状態かそれだけでも分かる。
患部が破裂しないで良かったと医者に言われたらしい。
本当にゾッとする。頼むから我慢強いのもいい加減にしてくれ。
じいちゃんの話によると食事時に部屋から出てこない美音を不審に思ったディアさんが、ベッドで高熱を出して意識が朦朧としていた美音を見つけたらしい。
「何やってんだ」
「ごめんなさい」
マジでカンベンしてくれ、その話だけでまた寿命が縮んだわ。死ななくていい病気で死んでしまうところだった。
「拓海、お前も疲れただろう。今日はシヴァの家でお世話になる事が決まってるんだ、行って少し休もう」
「う、うん…」
まだ美音と離れたくないな、出来ればここにずっと居たい。
「じいちゃん、俺」
繋いだ手がギュッとなった。美音が泣きそうな顔をしてる。
それに気づいたじいちゃんがちょっと困った様に笑う。
「美音もまだ拓海といたいんだね」
「うん、おじいちゃんお願い…」
滅多にわがままなど言わない孫娘の泣きそうな声だ。じいちゃんが困った顔で笑う、俺も胸が詰まる。
「じゃあこうしよう、アルフォートは一度私と家に帰りましょう、ウチの親も心配していますので。タクミは後でアリッサが迎えに来ます」
「良いのかね?」
「はい、私は今から店に出て母と交代します。アリッサは子供達の世話が一段落したらこちらに来れますから。きっといい時間ですよ」
「ありがとうございます!」
その言葉に俺も立ち上がって深々とお辞儀をした。本当にありがたい。
「シヴァ、お言葉に甘えるよ。本当にありがとう」
じいちゃんも御礼を言っていた。実際の所、俺はじいちゃんは休ませたかった。時差のせいで殆んど寝てない状態でじいちゃんは動いている、これはキツイ。
「アリッサさん、シヴァさん、よろしくお願いします」
俺はもう一度深々と頭を下げた。
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