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俺はいつの間にか寝入っていたらしい。
みそ汁の匂いで眼が覚めたら、ベッドにもなるというソファを畳んだまま、そこにもたれた状態で毛布にくるまっていた。
一瞬、ここはどこだっけと思う。でもみそ汁はうちのみそ汁の匂いだ。
「起きたの拓海?おはよう」
「おはよ、いつの間にか寝てた」
「グランドピアノのフル音量でも寝ていられるのはうちの兄妹ぐらいね」
「慣れてる」
カナ姉のピアノが子守唄だった兄弟だ、その頃から変わらないカナ姉の笑顔がそこにあった。
昨日と同じテーブルに目玉焼きとベーコンの朝食だ。でもご飯とみそ汁、納豆のミニパック付で大変嬉しい。
俺のベーコンはいつもすごくカリカリに美音が焼いてくれる。今日はカナ姉だからちょっと焼きが甘い。どちらかといえばこっちは昂輝の好みだね。
「いただきます」
みそ汁は王道の豆腐とネギだ。炊きたてご飯といい、凄いな、まるで日本だ。
「カナ姉、日本の食材ってこんなに手に入るもん?」
「近くに大きなスーパーがあるからね、今は日本食が流行っているから大抵の物はあるわよ。納豆とかがちょっと割高なのは仕方がないかな」
俺の為に色々用意してくれたのかな、ありがたいや。
「でも卵かけご飯は止めたほうがいいって友達に聞いたわ。日本の卵とは違うから生食しないほうが良いんだって」
「そうなんだ、残念」
卵かけご飯も好きだけどな。
「お姉ちゃんは今日も夕方までバイトだから、あとで美音の所に行くわね。拓海はとりあえず朝から行くの?」
「うん、そのつもりだ。昂輝も来るはずだし美音の引っ越しの件もあるから」
じいちゃんから連絡が来たらディアさんの家に行く。
「そう、気を付けてね。一応この辺りは治安はいい方だけど結局アメリカだから。遠回りでも表通りだけ選んで歩くのよ」
カナ姉も嫌な目にあった事があるのだろうか。
「うん、わかった。過信はしないよ」
十分、気を張って行くよ。
カナ姉の部屋を出る時に合鍵をもらった。と、言ってもカードキーだ。これと暗証番号のセットだそうで、暗証番号は実家の電話番号の下四桁だ。
「行ってらっしゃい」
カナ姉に見送られながら、一足先に部屋を出た。
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