53人が本棚に入れています
本棚に追加
「美音、ごめんな。肝心な時に兄ちゃんいなくて」
全くだ。天武流の遠征で仕方なかったのは分かっているけど、本当に油断できない。
けどそのせいで俺がアメリカに来れて、美音のこっちの状況がよく分かった。少しでも美音が暮らしやすそうな環境を作って帰れる。
「大丈夫よ昂兄、おかげで拓海とおじいちゃんに会えたのよ。二人には申し訳ないけどすごく嬉しいわ、それより遠征は大丈夫だった?昂兄が怪我してなければそれでいいの」
笑う美音、昂輝がいつも自分を気づかってくれているのを美音はちゃんと知っているのだ。
「あとで拓海と美音の引っ越しをしてくるからな。夕方には夏那も来るから」
「うん」
昂輝も美音の頭を撫でている。美音の頭って気持ち良いんだよな。サラサラで柔らかい髪がまるで猫みたいで。
「あ、来た」
昂輝のスマホにメールの着信だ。じいちゃんかな?
「エルンスト師範だ、ディアおばさんの所に着いてるけどなんかじいちゃんが困ってるって。俺達にすぐ来いって言ってる」
ゴネられてるのか。美音はあの家の小さな子供達には懐かれていたみたいだし。
けどそんなのは知ったこっちゃない。それも全部ジェイをあんなガキにしたあの家が悪い。
「行くぞ昂輝」
俺は絶対に妥協はしない。
最初のコメントを投稿しよう!