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そこで元は娘さんのものだったという部屋に荷物を持っていく。じいちゃんは客間の方に案内されていった。
壁紙もカーテンも明るい黄色で、置かれているベッドのカバーは可愛いピンクの花柄だ。ちゃんと勉強机やロッカーもある。
向こうの家のロッカーから手当たり次第に箱に詰めて持ってきた上着やセーターを沢山あったハンガーに掛けておく。どれがお気に入りとか分からないが、どれもシワがついたらきっと嫌だろう。
下着類は触らない。あとで怒られたら俺が嫌だ、封印。
画材も整理しようが無いからとりあえず机の上に。退院したら美音がなんとかするだろう。
「それにしても日当たりのいい部屋だな。窓から見えるのはセントラルパークだ、絵を描くのに良いぞ」
昂輝が言う。きっとこの家の中でもかなり良い場所なんだろう。少なくともあっちの家で感じたような嫌な雰囲気は微塵もない。
ここはひたすら温かい、良い所だ。
「昂輝、拓海、ランチの準備が出来てるぞ。早く来い」
エルンストが呼びに来てくれた。
「拓海、フリーデの料理は美味いぞ、特にパエリアは絶品だ」
昂輝が言う。フリーデさんの料理が目当てでここに通っているのか、お前は。
「鼻が良いな昂輝、ランチは正にそれだ」
「やった!拓海、早く行こう」
明るい昂輝の声で、俺はようやく美音にいい場所を見つけられたんじゃないかと思えていた。
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