act.5 護るべきもの 

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 フリーデさんの準備してくれた美味しそうなパエリアのランチを頂く。  じいちゃんとエルンストはビールまで出してもらってすっかりリラックスモードだ。じいちゃんもようやくホッとしたんだね。 「タクミ!Please!(どうぞ)」  フリーデさんが色々気づかってくれる。噂のパエリアの他にも肉料理やサラダ、デカいソーセージやジュースなどが沢山並んでいる。 「Thank you 」  どれもこれも美味しい家庭料理だ。これじゃ美音がすぐ元に戻るな。今の美音は以前よりかなり痩せていてちょっと心配だ。 「拓海、お前の日本語ってカッコいいな。聞いてて親父を思い出したよ」 「そりゃ参考にしてるもん」  どうすれば相手に対して効果的な一撃になるか、更にどう言葉でねじ伏せられるか。さすがにこの年齢(トシ)まで父ちゃんと付き合っていれば自然と身に付くよ。 「通訳が大変だったけどな、俺の弟は凄いなってつくづく思った」 「そうか」  実は持っている知識総動員だった、あれ以上続くとヤバかった。昂輝がしっかり通訳してくれたのはあいつの反応からも分かった。昂輝も凄い。 「うちの息子達の中では拓海が一番櫂に似ているな。物言いもだが、その揺るがない一途な信念が間違いなく櫂譲りだ」  じいちゃんはそう言ってくれるが、母ちゃん曰くその一途さは融通のきかない頑固と表裏一体だって。  まぁ、もっと勉強しよ。圧倒的に俺はまだまだ知識が足らない、このままだと美音に負けてしまう。  それは男として情けない。 「そうだ拓海、お前の父の話だが」  ん?じいちゃん? 「いつから知っていたんだ?その事は私と櫂しか知らないと思っていた。お前の父がアメリカ人だということは」  やっぱり父ちゃんは知っていたんだ、知ってて知らないふりをしていたんだね。  でもあの時の『お前の父親はこの俺、出雲櫂だ』という言葉を俺は一生忘れない。 「去年の文化祭頃かな、北に聞いて知ったんだ」 「北くんに…やっぱりはあの子は本物か、視えているんだね」 「うん」  俺は疑った事は無い。 「俺のこっちでの名前も教えてもらった。ちゃんと愛のこもった名前だったよ」 「なんて名だ?」 「教えない」  俺は笑った。太陽の精霊(サン・カシナ)というこの名前はあんまり他の部族とかに知られるとダメなんだって。本当の名前が呪詛とかに使われると困るからだと北が(親父が)言った。教えられるのは同じ部族の仲間だけだ。 「ちぇ、俺は兄ちゃんなのに」 「まぁ、そのうちな」  この国ではない所で、本当に信じられる人には教えられる。日本でならその機会もありそうだ。  俺は真っ先に美音には教えてあるけど。  ふと気づくと、じいちゃんとフリーデさんが楽しそうにミネという名前を口にして嬉しそうに笑っていた。 「フリーデは美音が来るのを楽しみにしてるってさ。美音はどんな食べ物が好きかとか料理を一緒に作りたいとか、一緒に買い物にも行きたいって」  昂輝が教えてくれる。良かった、美音を可愛がってくれそうだ。 「俺の嫁だ、お前達兄弟の事は昔から話している。安心して良いぞ拓海」  エルンストがそう言って笑った。  本当にようやく安心できた気がした。フリーデさんが美音を買い物とか散歩とか、楽しい事にいっぱい連れ出してくれると良いな。 3ab4327e-8f93-4d28-8f33-8a60f62f15da
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