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春休みになってすぐ、うちの家族が大阪から引越して来た。
お手伝いのカナ姉も一緒にみんなで父ちゃんの車で来たあと、午後からは荷物を積んだトラックが到着。
ちび組は危ないからとばあちゃんと母ちゃん、手伝いに来てくれた秋風おばさん達にお任せして、俺達は父ちゃんの指示で家具類の設置。と言っても古い家具類は向こうでかなり処分して来たと言うから主にちび組の学習用の机や男子部屋のみ二段ベッドの設置だ。
じいちゃんとばあちゃんの向こうの家にあった家具類はアンティークの良いものが多かったので、それは新居や母屋の前もって決められた所に置かれたり色々。
女子の寝室には俺が前もって設置した美音のお姫様ベッド。その隣にばあちゃんちお下りのゴージャスベッドだ。これはカナ姉専用になりそうだ。
「ほんとに細々した部屋は無いんだな、二階は男女別の寝室が二つだけで後はフラットな空間か」
そのフラットな空間が勉強部屋兼用だ。多目的なプレイルームとなっている。学習机と凪紗のミシンや真也の本棚がそこに置かれた。今は二人用だけど、ここにひかりが加わればきっと賑やかになる。
ちなみに俺の部屋は一番最上階の屋根裏みたいな秘密基地だったそうだ。俺なら面白い使い方をするかもと父ちゃんが思ったそうで、ちゃんと空調も完備だとか。
あの部屋はもう拓海のものだから、お前が自由に使っていいと父ちゃんが言う。
高校を無事卒業して今の部屋を出る時には使わせてもらおうと思う。
新居の一階はリビング・ダイニングやキッチン、バスルームや水回り全部の他には父ちゃんの書斎や母ちゃんのアトリエ、そして父ちゃん達の寝室だ。
二階にはさっきのちび組の勉強部屋兼用プレイルームと一応男女別の寝室。三階は二階とほぼ同じ構造。俺や昂輝達が自由に使える空間で、父ちゃんとしては、俺たち兄弟が子供を連れて遊びに来れるところと思っているらしいが、そこはまだ使い方未定。
美音が帰ってきた時はアトリエとして使っても良いと父ちゃんはいう。
どちらにしてもまだ、色々先の事だ。
引っ越しが終わってから夕方にはみんなで引越し蕎麦を食う。手伝いに来てくれた隆成おじさんの一家も一緒に、みんなで賑やかな晩ごはんになった。
そして、その引越し祝いに花を添えてくれたのはカナ姉ではなく春風のピアノ。ちょっとたどたどしいが、それでも一生懸命な可愛いピアノをみんなで聞き入る。
「あれからずっと春風はピアノに夢中なの、夏那のおかげだわ」
秋風おばさんがとても嬉しそうだ。
「いっぱい練習して夏那みたいになりたいってずっと言ってるよ。春風には夏那が憧れのピアニストだ」
隆成おじさんも言う。
「春風ちゃんの憧れでいられるように私も頑張るわ」
カナ姉が立ち上がり春風の傍に行く、椅子をもう一つ春風の傍に置いた。
一言二言を春風に言って、笑顔の春風と一緒にピアノを弾き始めた。キラキラ星の連弾だ。
春風の笑顔がとても嬉しそう、憧れのピアニストとの共演だから当たり前か。
その他にも春風が知ってる短い練習曲や童謡や、その全ての曲にカナ姉が連弾ピアノを合わせていく。これは聴いてる方も楽しい。
秋風おばさんがちょっと涙ぐんでいたりする。動画を取っていた山岳もしっかりおばさんの泣き顔も撮っていたりして。
とてもいい雰囲気で引越し祝いが終わった。
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