過不足の無い予感

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 少し談笑を挟んで、1人が言う。 「いやそれにしても、お前の予言は大したものだ。別にお前の仕事を馬鹿にするわけじゃないけどさ、サラリーマンなんて止めて、予言者にでもなれば儲かるんじゃないか?」 「そうだな、その方が成功できるよ」  皆もその言に同調してくる。  確かに、今や成功者になろうとしている旧友達に囲まれると、ありきたりな人生を歩む自分が少なからず惨めにも思えてくるが、それでも僕はそんなことに何の意味があるのか、やっぱりわからなかった。 「いや、別にそんなのはいいよ。成功したいなんて思わないよ」  僕は正直に言う。 「なんでだよ、もったいない。間違いなく予言の才能があるんだし、絶対成功するよ」 「いや意味が無いよ、成功なんて。そんなことには興味も無いし、悪寒が走る」  少しお酒も入っていたので、僕は思うままに話す。 「出た、悪寒。悪寒ついでに予感も走り出したんじゃないか?」  茶化(ちゃか)されると、少し苛立(いらだ)つ。  苛立った勢いで僕は続ける。 「……悪寒ついでに予感も走り出したので言っておくと」 「……ほう」 「というより子供の頃からずっと走ってた予感、というより予言なんだけど」  誰にも言わないでおこうと昔から決めていたことなのに、お酒と苛立ちのせいで、口が滑る。  予言が当たるかどうかなんて、僕にはわからないし、それに根拠など何も無いので、無理矢理信じろとも、やはり言えない。  それでもただ1つだけ彼らに伝えたいことは、予言というものは単なる未来の投影であって、それは決して人生の訓示などでは無く、彼らが信じようが信じまいが、おそらく結果は大して変わらないものだということだ。  僕は子供の頃から頭に浮かんでいた近い未来の光景を、お酒の勢いと共に彼らに告げる。  彼らが信じるかどうかは僕にはわからないが、もしこの予言が当たってしまうのなら、少なくとも僕には今の人生における成功なんて、誰にとっても大して意味の無いもののように思えていた。  だから僕は、基本的に興味が無い。 〈了〉
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