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「ねえイブ、アウトレットってなに?」
「あー、アウトレットか」
イブは少し黙る。
「在庫を大量に仕入れる事で、商品の単価を安くして売る施設の事だ」
「普通のモールとは何が違うの?」
「ショッピングモールと違うのは、アウトレットはハイブランドな商品が多く扱われているって所だ」
「ふうん」
──警告。
不正なプログラム内の凍結されたファイルが解凍。任意で削除できます。
──キャンセル。
「……昔、ショッピングモールに行った事があるわ」
「ほう、元お手伝いロボのお前がか?」
「ええ。目的は忘れたけど、確か2層式洗濯機を見たわ」
「ははん、さしずめ前の主人と買い物にでも行ってたんじゃないか?」
「そうかも」
──エアロアーマーを展開。EMPシールド充電中。
「ん、いるのか?」
「ええ、もうすぐ攻撃圏内よ」
──動体検知フィールド展開。対ロボット戦闘プログラムを起動。
「……なんだ、来ねえじゃねえか」
──動体検知。秒速1020m。
──左アームに弾丸によるダメージを検知。吸収率43%
「うおっ!!」
「イブのカメラめがけて飛んできた。やる気まんまんね」
「クソッ、守れミラ!!」
「自分でなんとかしなさいよ」
──機器検知。
複合機4機。
「来たわ」
──βモード自動生成プログラム「抜魂」。右アームユニットの先端に小規模なプラズマを発生させ、高エネルギーを直接当てられる。
お手伝いロボA…ショート
自動車整備ロボA…全機能停止
自動車整備ロボB…修復不可能な損傷
医療用ナースロボA…電力喪失
「おいおい……、しょっぱなからこんな品質の良いロボが来るか?」
「止まらないで、まだ来る」
──機器検知。
複合機3機。危険作業機2機。
「ミラッ!!」
──頭部ユニットに刃物によるダメージを検知。吸収率24%
医療用ナースロボB…ショート
高所作業ロボA…修復不可能な損傷
お手伝いロボC…全ユニット機能停止
対ハズマット作業ロボA…ショート
医療用ナースロボC…記憶媒体の損傷
「……ふぅ」
「ミラ、メインカメラが…」
「目が一つやられただけよ」
──機器検知。
複合機2機。自立型重機1機。
「おいおい、あんなのまで……」
「所詮でかいだけのクレーンね」
土木作業ロボA…全ユニット機能停止
土木作業ロボBのスティッキーEMPキャノンにより、左レッグユニットの一時機能低下。──胸部に脚部装着型転圧機によるダメージを検出。吸収率64%
「まずい……ミラ!!」
──全ユニットに自立型アンローダーのアームによるダメージを検出。吸収率4%
──システムエラー。右アームユニット、ショートにより一時的に機能停止。
「……」
──右アームユニット、過電流モード解除。エアロアーマーを完全絶縁モードで展開。
電力、2400%
自立型アンローダーA…ショート
──抜魂、エネルギーリチャージ中。
──βモード自動生成プログラム「伐砕」。左アームユニットを高周波で加熱、高速回転させ、物理的に切断できる。
土木作業ロボB…胸部ユニットの全断裂
「……ふぅ」
「おい、大丈夫かミラ」
「多分大丈夫、シールドはほぼだめになったけどね」
──システムチェック……
胸部ユニットに3%の歪み、自動修復可能。
右アームユニット、全壊。修復不可。
左メインカメラ、損傷。修復不可。
エアロアーマー、破損。修復率12%
その他は正常に機能している。
「他のロボット達は来ないようね」
「そうだな」
「今のうちにパーツを交換しておくわ」
──機器スキャン開始。代替部品診断中…。
医療用ナースロボのサージカルカメラを、本機に代用可能。土木作業ロボの右アームユニットを代用可能。
「イブ、私のカメラをこれと変えてくれる?右手は自分でやるわ」
「了解。じっとしてろよ」
──新しい機器が検出されました。「医療用サージカルカメラユニット」インストール中。インストール完了。「土木作業汎用アームユニット」インストール中。インストール完了。
「……よし、悪くないわね」
「モールの中まで行くのか?中から奴らが見てるぞ」
モールを見る。数多くの盗賊ロボットがこちらを見ている。
「このクレーンが倒された事自体、彼らにとって想定外だったみたい。きっと中に入ったとしても何もしてこないわ」
「誰もミラには勝てない事を悟ったって所か?」
「ええ。多分彼らの中で、彼らが私に勝てる確率は現状3.2%って計算だと思うわ」
「……改めてお前が相棒でよかったよ、ミラ」
モールの中へ入っていく。かつては人々で栄えたこの地も、今となってはロボット達のために最適化し尽くされ、内部構造は複雑に入り組んでいる。
「おいおいこいつら、ずっとこっち見てやがるよ。こえ~」
「私の方が怖いのよ」
適当なロボットに近づく。
──機器スキャン開始。
・「家庭用お手伝いロボ『アンナ』」
至る所に、戦闘能力を上げる目的の違法改造の痕跡あり。
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日本が世界に誇る家電メーカー「Mirror」社より、家庭用お手伝いロボがよりお求めやすい価格で登場。
前作『ミラMk-Ⅲ』と比較して、ステンレスパーツを一部樹脂に変更することで軽量化、コストダウンに成功。
さらに新機能として、意思疎通AIを追加。作業などの指示だけでなく、日常的な会話や雑談をお楽しみいただけます。
「あなた、この建物の中にガソリンはある?」
「……」
「はぁ、応用が聞かないのね」
「……」
腰に手を当てる。
「ったく。……あるのはわかっている。位置を示せ」
「…B-2区画、座標登録無し」
「B-2区画へ案内せよ」
「かしこまりました」
アンナは先へ歩いて行く。
──システムエラー。正面の機器に通常とは異なる挙動を検出。サポートセンターへの通報を推奨。
「行くわよ、イブ」
「信用して大丈夫なのか?」
「……どうかしらね」
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