ハルジオン

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「ようやく街についたわね」 「油断するなよ、多分ここにも賊がいる」 私はあたりを見回す。 ──地形スキャニングシーケンス起動。 スキャン中…………完了。 かつてのオフィス街。高層ビルが立ち並び、比例してアンドロイドの活動の痕跡が多数残る。 ……アンドロイドの反応なし。 「これだけのオフィス街だ。どうせどいつもこいつも相互検知ジャマーを装備してるハズだ」 「わかってる。でも」 「生きている人がいるかも、だろ。わかってるさ」 生きている人を探し、手助けをするのが私の使命。 ──過去のログファイルを参照。 ・現在の本機の所有者 ********* 75歳(現在) 個人情報保護プログラムの機能により、本名は暗号化済み。本職は無職。便宜上『あの人』と呼称。 45年前、肺炎を患った彼からの「生きている人を探して、助けてやってほしい」との命令により、現在に至るまで生きている人を探している。 本機(私)の愛する人。 「『あの人』とやらも、俺と同じで運がいい」 「どうして?」 「ミラみたいな面白くて、それでいてクソみてえに強いロボットは、滅多にお目にかかれないからな」 「……え、ありがと」 「おいおい照れんなよ。褒めてねえから」 ──システムエラー 思考アルゴリズム内にてエラー。正しく計算されていません。 「イブだって、相当稀だと思うけど?」 「忘れたのか?俺だってお前の言う『あの人』と同じ、元人間っていう設定だ」 「あら、すっかり忘れてた」 「ロボットのクセに」 「それ、いつも私がいうセリフよね」 「真似したんだ。似てるか?」 ──システムエラー 思考アルゴリズム内にてエラー。僅かな殺意を検知。10秒で削除されます。 ──アプリ『Wink.exe』を起動。声紋コピーを実行。 「『黙っとけ、このロボット風情が』」 「流石にミラのモノマネに勝てるヤツなんかいないだろうな」 「これだけは覚えておいて。あんたのモノマネは、全然似てないってこと」 「はいはい、負けました」 ──僅かな殺意の削除に成功。 「んでだ、ミラ。この街、そんなに狭くは無いみたいだが、一体どこから手を付ける?」 「そうね……」 あたりを見渡し、周辺測位ができる高台を探す。 「そこのタワーの屋上を目指す」 「ガッテン!」 「ガ……何?」 「承知したって事だ」 「あぁ、合点ね」 私とイブは、タワー内部に侵入する。 ──スキャナーを起動。 「これ、見て」 「ああ、ヒューズボックスだ」 「丁寧にヒューズが切り取られてる」 「ああ……、いるな」 「注意して」 ヒューズボックスを静かに閉じる。 「ヒューズの中身を取り替えた……、おそらくは私と同じ市販品モデルね」 「あのなあミラ、あんたと同じってのは流石に無理がある」 「……確かに」 「もしこの世界にまだ法律があるんだったら、お前は確実に違法改造まみれのテロ用兵器として破壊されてるだろうよ」 「私の知る限り、私は人間の技術力で勝てる相手じゃないわよ」 「ああ……、それは今残存してる全てのロボットに言える事だろうな」 ……小さな物音を検知。エコースキャン開始。 「……その壁の裏側にいるわ」 「襲ってはこないみたいだな」 ゆっくりと、扉が空いた。 「……猫?」 「ニャー」 ──生体スキャン開始。 イエネコ 推定5齢。 リビエヤマネコの家畜化。 この個体の模様は特に「三毛猫」と呼ばれ、殆どの場合はメスである。 バイタルには問題ないが、外観上観測不可能な損傷を四肢に負っている。 外力による意図的な損傷である可能性が高い。 バイオエネルギーソースとして、一度に約70時間分の稼働電力を得られる。 「この子、怪我してるみたい」 「……こんな所でか?」 「他のロボットにやられてる。多分罠ね」 「罠……?」 「ええ、この子が。今の所何もないあたり、下手に動けなくなったわ」 「……クッソ、こうなるとシグナルジャマーも使えねえな」 「……向こうも私達の出方を伺ってる。警戒してるわね」 ──医療用高度エコーを起動。 …………イエネコの盲腸内に異物を検出。 「この子の体内にEMP」 「電磁パルスか……厄介だな」 ──エコー範囲を拡大。 上階に人型ロボットを3体検出。動いた。 「……バレたッ!!」 猫とイブを素早く回収し、後ろに下がる。上のロボットが天井を突き破り、破砕用ドリルを地面に突き立てるまで、0.27秒だった。 「うおおお!ド派手にやるねえ!!」 ──EMPシールド充電開始。 「……間に合わないっ……!!」 ──WARNING ネコの体内よりEMPを検 ==ERRO== シスtムに大ナ損■が発生。Recovery modeにkり変え 「おいミラ!しっかりろ!!」 「……[ALERT]」 「クソ!何言ってんだかわかんねえよ!」 「……[制御Code73]」 「あー、なるほど。そりゃ賢明だな!クソったれ!!」 ──ストレージの内、15%の修復に成功。 ──対人、対人アンドロイド複合バトルシステムを起動。建設用穿孔機、エアロアーマーを展開。 「間に合った!」 穿孔機がお手伝いロボット-1のバッテリーに命中。機能停止。 背中に破砕用ドリルのダメージを検出。吸収率89% 「やっちまえミラ!!」 『カポエイラ:右足を軸とした回転足払い』がお手伝いロボ-2の足に命中。 対物防御により、お手伝いロボ-2のアーマーで、破砕用ドリルを防御。 お手伝いロボ-2右アームのハッキング完了。アーク溶接機出力を10²⁵%に書き換え。 建設用アンドロイドに命中。お手伝いロボ-2と共に機能停止。
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