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──環境スキャン開始。
水温49℃。硫黄などのイオンが含まれる。含有量が僅かな為、詳細なスキャンは不可。
「これが……温泉……」
「入らないのか?」
「は、入って見るわね……」
脚部から温泉に入る。
──脚部ユニットの温度上昇を確認。
「……ふう」
「せっかくなんだ、肩まで浸かれ」
「い、言われなくてもそうするわよ」
──全身ユニットの水濡れを確認。外部電力を遮断、防水モードに移行。
「ふぅ~」
「どうだ、ミラ」
「熱いわ」
「そりゃそうだ」
「イブと博士も入らないの?」
「ニャ」
博士は嫌そうにこちらを見る。
「まあ……そりゃ猫だからな」
イブは私より早い速度で温泉に入った。
「……まあミラからしてみたら熱いだけだろうな。俺には温度センサーすら付いてねえからただ濡れてるだけだ」
「そんなことない。潤滑剤が少しだけ滑らかになったわ」
「いつも思うんだけどお前、ホント人間みたいだな。面白い」
「温泉が気持ちいいって感じるのは人間だけじゃないって事ね」
「ああ。博士も猫じゃなけりゃ入ってたかもな」
「ニャー」
──システムエラー。
不正なプログラムにより、タイマーに異常。通常よりもタイマーのカウントに遅延。修正する場合、不正なプログラムの削除が必要です。
──エラーのキャンセルを実行。
「こうしてゆっくりとした時間を過ごすのも、『風情』ってやつなのかしら」
「……そうらしいな。博士を見てみろ」
大きく口を開け、博士はあくびをする。
「少しだけ、人が羨ましくなったわ」
「ああ、わかる」
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