片っぽな話

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片っぽな話

 僕は幼いころからアトピーが酷く、特に小学生のころはいつも体中をかきまくっていました。  別にいやらしい意味ではないのですが、乳首をよくかいてました。  乾燥しやすかったんだと思います。  毎日、風呂上りにボリボリかいていると、少し腫れあがってきました。  小学生ぐらいのときです。  その姿を見て、中学生の兄がこう言いました。 「お前、そんなに乳首かいていると、とれるぞ」  僕は笑いました。 「とれるわけないじゃん。お兄ちゃん、なに、バカなこといってんの」  そう言うと、兄は怒りました。 「冗談じゃないぞ!」 「え?」 「本当にとれるんだからなっ!」  てっきり年の離れた弟をからかっているんだろうと思いました。  しかし、兄は真剣な顔でこう言いました。 「お兄ちゃんの友達で乳首とれたやついるぞ!」 「ウソッ!?」 「本当だ」  兄が所属していた野球部で起きたことらしいです。  部活を終えて、部室で着替えていた男友達が、毎日のように「あー乳首かいい」と言ってかきむしっていたそうです。  それを兄は毎日見ていたそうで、部室内でもみんなでいつものことだと笑っていたらしいのです。  しかし、ある日、その友達が「かいーーー」とかいていると、ボトンと片方の乳首が床に落ちたそうで。  ビックリしたその人は乳首を持って、病院に向かいました。  手術で再生させるのだろうと思っていたそうです。  診察した医師はこう言ったそうです。 「男性ですし、今後、使うことはないでしょう。手術は必要ないですよ。そのままで大丈夫です」  そう言われて、結局、その人はその日から片方だけ、乳首がなくなってしまったそうです。  兄は幼い僕に厳しく言いました。 「お前も乳首落としたくなかったら、もうあんまりかくなよ!」 「うん、わかった」    その日以来、僕は兄のいいつけをまもるようになりました。  
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