お前だけ

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お前だけ

急いで病院へと車を走らせる。 「桐生、頑張れよ、もうすぐだ」 病院入口に車を止め、桐生を抱いて病院へ駆け込む。 「頼む!この子を見てくれ!意識を失って10分ぐらいだ!」 桐生はストレッチャーに乗せられ処置室へと入った。 看護師が詳細を聞きにくる。 『あなたは?』 「コイツの学校の教師です!」 『何があったんですか?』 「男4人に押さえつけられてて…でも…触らせなかったって…はあ、はあ…」 『落ち着いたください。顔が真っ青です、ちゃんと息をしてください』 「息ができないんだ…アイツがいないと…」 『少し待っててください、様子を見てきますから』 桐生…どうか無事で…神様頼む、アイツを失うなんて考えられない。 『先生、彼は大丈夫ですよ。骨折はありますが、臓器損傷はないそうです』 俺はそれに安堵し、そのまま気を失った。 ふと目が覚めると、病院の匂いが鼻を突く。 なんでこんなとこに? そこから一瞬で、記憶が甦る。 「桐生!どこだ!」 俺はガバリと起き上がり、大声で桐生を呼ぶ。 「せんせ…ここだよ…」 力無い声がカーテンの奥から聞こえた。 俺はシャッと音を立ててカーテンを開ける。 そこには包帯でグルグル巻きにされた桐生がいた。 「桐生…良かった…大丈夫か?」 「うん…全身痛いけど、とりあえず生きてる」 「バカ…心配したんだぞ」 「先生も倒れたんだって?なんで?」 「なんでってお前…」 そうだ…俺は桐生になんかあったらと思ったら、息ができなくなったんだ。 「なんでもない。ただの過労だ」 「ふぅん、さっき校長が来て手続きとかしたって言ってた。僕…しばらく入院だって。先生も学校に電話した方がいいんじゃない?」 「ああ、そうする。一人で大丈夫か?」 「子供扱いしないでよ」 「そうだな、すぐ戻る」
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