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ファーストキス
俺は学校へ連絡を入れ、看護師のところへ寄って話をした。
「桐生…起きてるか?」
「ん、先生おかえり」
「お前…一人暮らしなんだって?しかも、俺んちの向かいのマンションで」
「バレちゃったか…僕の初恋だよ。中学生の時、マンション前で先生を見かけて一目惚れ。んで高校の先生って知って追いかけて来た。親の海外赴任も留守番でね」
「バカなヤツ…俺なんかの為に」
「先生…こっち来て」
立ったままで俯く俺を近くに呼ぶ。俺は近くの丸椅子に座った。
「先生…手…」
身体を動かせない桐生の手をギュッと握る。
「手…冷たいな。桐生…悪かった。俺がもう少し早く見回りに出てれば…」
「でも、先生は僕を助けてくれたでしょ?あのまま犯されてたら…あなた以外なら死んだ方がマシだと思った。先生があと1分遅かったら舌噛んで死んでたかも…」
「バカな事言うな」
「だから、ありがとう。先生のおかげで死ななくて済んだし、こうやって先生と過ごせてる。ありがとう」
「桐生…痛いか?」
俺は、殴られて腫れた桐生の頬に手を当てる。
「ん…殴られたとこより、心が痛い。無理矢理キスされたから、相手の唇咬んだら殴られた。ファーストキスだったのに…」
「そんなのキスじゃない、だからお前のファーストキスは無事だよ」
俺は桐生の紅い唇に指を這わせ、無意識にその唇を奪っていた。
ちゅ…
「せんせ…」
「うわっ、わ、悪い…俺…何を…」
俺の手を握ったままの桐生の手に力がこもる。
「先生…もっと。お願い、あんなの忘れさせてよ…」
その潤んだ瞳に抗えるはずもなく、俺は夢中で桐生の唇を奪った。
「っつ…いってぇ」
「桐生、大丈夫か?」
「うん…口ん中も切れてる。でもキスやめたくない…」
「これ以上はダメだ…俺、今夜はここへ泊まるから。校長にも看護師にも許可とった」
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