変わる

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「あんた、結婚して子ども産んでも自分も大事にしなきゃダメだよ」 母は不意にそんなことを言った。 「自分の価値って自分で決めるもんなんだよ。家族のためにって自分を犠牲にしたり、節約のためにって自分を安くしちゃダメ」 「贅沢しろってこと?」 「贅沢ってわけじゃないけど、自分が自分を大事にしてあげないと、人からも大事にされないものなのよ。 いつも安い服を着て、安いものを食べてたら、この人はこの程度でいいんだって思われる。安くても手をかけて大事にしていれば、この人は粗末に扱っちゃダメなんだって周りも自然とそう思うのよ」 自分自身もね、と呟くように言った母の横顔が今までに見たことないほどきれいで驚いた。 母は今、自分を大事にしようとしているのだ。これまでできなかった分まで。 母はタブレットPCを手に取ると、ネットで俳優さんの写真を表示させわたしに見せてきた。 「今、この人に超はまってるの! ディナーショーのチケットが取れたら絶対に行くから! それまでに痩せて美魔女になるわよ」 ちょっぴり変わった母の意気揚々とした叫びに、もしかしてこの間の人間ドックの結果が悪かったのではと心配していたわたしは馬鹿らしくなってしまった。 でも綺麗になった母と姉妹みたいに並んでショッピングに行ったりするのも悪くないかもしれない。 頑張れ母! <了>
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